2018年 5月号 愛知県内の文化ホールについて
最近の愛知県における芸術文化関係事業の実施状況は、主催者にとって会場確保が困難となっている問題がある。主要施設・ホールの経年劣化による改修工事に加え耐震補強や天井耐震工事などにより、休館となる施設があり代替施設の確保に苦労している。
愛知県芸術文化センターは、コンサートホールが平成29年8月1日~平成30年11月25日まで、大ホールは平成30年4月1日~平成31年4月22日まで、そしてアートスペースが平成29年11月28日~平成30年7月23日まで休館となっている。そのため、コンサートホールを利用してきた「名古屋国際音楽祭」「名古屋クラシックフェスティバル」そして「スーパークラシックコンサート」など、地元テレビ局が主催する公演会場が全て日本特殊陶業市民会館フォレストホールで実施されている。
音楽分野だけにとどまらず、愛知芸術文化センターアートスペースの休館により、地元3芸術大学が昨年度末に開催した卒業展覧会にも影響が出て、卒展はそれぞれの大学において開催をしたところである。
愛知県では、2008年に愛知厚生年金会館が、2010年には愛知県勤労会館が相次いで閉鎖された。いずれも1,500席前後の施設が消滅し、興行ベースの事業が益々困難になっていると聞いている。
県内の主な公共ホールは、地域名を冠した市民会館という名称を使用し1960年代から1970年代に建設されている。1980年代以降に建設された自治体の公共施設・ホールは自治体名の後に「市民文化」となり、その殆どは1,000席を超える座席数があり、改修を終えいずれも継続して利用されている。しかし、決して稼働率が高いとは言えない状況で事業運営が低迷しているのが残念である。
ネーミングライツ(公共施設等に名称を付与する権利)は日本において2005年頃始まったが、当初の目的である施設の維持・運営費を賄う新たな財源確保に資する効果があったのか、明確な評価がなされていないように感じている。本来はネーミングライツで得た収入を事業運営に投資することが望ましいと考えている。
中日劇場が2019年3月で閉館となり、また1,000席を超えるホールが無くなることになる。一方で御園座が今年4月にリニューアルオープンし、歌舞伎や歌謡ショーに加え中日劇場で公演していたミュージカルや舞台が上演されるようである。名古屋市外で新たに開館した刈谷市総合文化センター、東海市芸術劇場がアクセスの利便性もあって名古屋市内で行われていた事業の一部が行われるようになっている。
あらためて文化施設を取巻く状況が変化し、建築技術の発展、音響照明技術の進歩による舞台の在り方が見直される中、既存の施設の有効利用に向けて新たな利用について検討がされるよう期待している。