5月号
館長 竹本義明
久しぶりに東京に出掛けた。ヤマハ株式会社が19年ぶりにグランドピアノ〔CFシリーズ〕を発表するコンサートに招待を受け、清水和音氏によるショパンのピアノ曲に続き、小林研一郎指揮の東京フィルハーモニー交響楽団とのチャイコフスキー作曲ピアノ協奏曲第1番の演奏を聴くことが出来た。会場の東京オペラシティーコンサートホールは、「タケミツメモリアル」として作曲家の武満徹作曲賞(毎年1人の作曲家が審査員を務め、それぞれ独自の判断でその年の受賞作品を選考)を主催している。今年は、ニューヨークコロンビア大学作曲科教授のトリスタン・ミュライユ氏(音響音楽の先駆者として注目される作曲家)を審査員に招聘している。ミュライユ氏は5月31日に名古屋芸術大学でもレクチャーを行なうこととなっている。
翌日、待ち合わせまで時間があり六本木ヒルズの森美術館で開催している「ボストン美術館展~西洋絵画の巨匠たち~」を鑑賞した。平日の午前中にも関わらず多くの鑑賞者がいることに驚いた。午後は、著書「実践アートマネジメント」出版でお世話になったレイライン出版の東郷禮子社長、津田みや子取締役と一緒に会食するため吉祥寺へ向かった。
途中、吉祥寺駅から商店街を抜けようとして、たまたま武蔵野市立吉祥寺美術館を見つけ時間に余裕があり入館した。規模は小さかったが、幸いに棟方志功展(南砺市立福光美術館所蔵作品より)と常設の「浜口陽三記念室」「萩原英雄記念室」で両作家の版画作品や関連資料をゆっくりと鑑賞することができた。
会食では著書に推薦の言葉を頂いた利光 功先生(前大分県立芸術文化短期大学学長、日本アートマネジメント学会会長)とご一緒し、芸術談義に花が咲いた。特に東郷社長が持参しレイラインが出版する「arc岡本敏子追悼号(2005年8月3日発売)」をもとに、岡本太郎とパートナー、養女、実質的な妻であった岡本敏子の話で盛り上がった。
最近、気になっていることがある。鳩山政権の文化・芸術政策に関わる平田オリザ氏が関わる「劇場法」についてである。内容は、全国にある2千を超える公立文化ホールを30~40の拠点づくりで整備し、国の文化予算も外務省の国際交流基金、総務省の地域創造に文化庁の文化予算を整理・統合して5,000億円規模するということである。それにあわせて観光拠点も目指すとされている。現状では行方が混沌としているが、ここでも市民置き去りで特定の組織・団体だけの論議で物事が進んでゆくのだろうか、心配である。
そして「あいちトリエンナーレ2010」が8月21日から10月31日の72日間開催される。先日愛知芸術文化センターのセンター長に就任した大野さんとお会いする機会があったが、トリエンナーレの実行委員会の事務局長も兼ねており、芸術祭成功にかける熱い情熱が感じられた。私も応援の記事を中日新聞に掲載したが、愛知県で初めての国際芸術祭であり是非成功するよう願っている。