2月号 ホール連携の必要性
館長 竹本義明
ホールはそれぞれ開館に至る経緯があり、様々な顔を持っている。行政主導で建設計画を進めたホールがあれば、住民主導で建設を実現させたホールもある。しかし、建設までの過程より、開館してからの運営がどのようになされているのかが重要であり、実際そのことがホールの顔の表情に如実に現れている。
公立文化施設の運営は大きく分けて直営と自治体の財団組織が受託する指定管理、そして純粋な民間指定管理であるが、どちらにしても事業運営の事業費のあり方が問題になる。直営の中には事業費を消化しきれないホールがある一方で、自主事業を行わず貸館となる施設がある。そして、絶対的な予算が不足し、娯楽分野の事業を先行させて、自前で事業費を確保し、本来公立文化ホールが実施すべき収益性が低く芸術性の高い事業を実施しているホールもある。
劇場・ホール間を連携させる施策としては、(財)自治総合センターによる宝くじ文化公演による連携事業、(財)地域創造による連携事業(3つ以上の地方公共団体が連携し、効率的な運営を目指して共同で行う事業を支援するもの)の他、民間文化財団による支援事業等がある。これらは事業運営に当たって事業予算が不足している、あるいは実施のノウハウに心配があるなどの悩みを抱える劇場・ホールにとって、1館では困難な事業でも複数館で実施できるメリットある。民間文化施設では、東京の紀尾井ホール、大阪のいずみホール、名古屋のしらかわホールにおいて、共同で作曲作品の依頼と演奏や同一プログラム公演などを実施し、一定の成果を得ることがあった。
本館も以前に長久手文化の家と演劇鑑賞事業や演奏事業を実施した経験がある。それらは必ずしも補助金を頂いた事業ばかりではなく、いわゆる鑑賞者の競合が無い地域ならではの公演として先輩施設のノウハウを学び、有形無形の援助を頂いたと思っている。このような事業の実施ができるのは、愛知県内の公立文化施設の職員・スタッフが「ぺーぺーの会」という親睦組織を立ち上げ、実質的には飲み会であるが定期的な情報交換の場として、また、新人職員の悩みを共有して適切なアドヴァイスを出す有意義な会として存続していることと、連携事業の情報交換の場として機能していることで可能となった。
ソフト(実演団体)を持つ施設は、明確な顔を持つことが出来るが、ハードのみの施設では無表情な顔となるので、劇場・ホールは特色ある表情を実現するため、ソフトを持てなくとも、それに準じた実演団体の公演が実施されるよう努力すべきであろう。そのためには、様々な連携が功を奏すことを述べておきたい。