― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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6月号 芸術事業のマネジメント

館長 竹本義明

芸術的に価値の高い公演を行うにあたって、そのマネジメントについて予算(お金)のことを云々することが憚られた時代があった。現在でもそのような意識で事業を行うことが完全になくなった訳ではない。しかし、1990年代以降メセナ活動の高まりとともに、いわゆる異質ともいえる文化・芸術と経済の関係が見直され、公演実施には明確な予算書作成が必要と認識され、費用回収率を高める取り組みが求められるようになってきた。マネジメントという言葉自体、従来は企業や組織の経営・運営の意味で使われていたが、芸術分野のマネジメントは多面的な取り組みが求められ、企業より複雑で調整が難しいとされる。実際にマネジメントを行うにあたって企画担当者が悩むことは、実施する事業予算の中の出演料金の妥当性についての判断が難しい、ということではないだろうか。

公立の文化施設には、ダイレクトメールで多くの公演紹介が送られてくる。一部マスコミ媒体を賑わす実演家や企画物は別にして、それが芸術的にどのようなレベルのものであるのか、皆目見当のつかないものもある。料金は適切か、また、支出予算の回収が確実に出来るだろうかということも、事業遂行の決定を行う上で大きな要素である。公立文化施設は予算が潤沢にあるわけでなく、限られた予算で公平性に配慮した精密な予算の積算が必要となる。事業の遂行にはマーケティングをしっかり行い、実際の出演交渉となればスピード感のある判断が必要となり、瞬時に交渉を進めなくてはならない。こうなってくると、リスクを回避できる可能性のある安易な事業の実施に取り組むことが得策と思えることもある。

こうして執筆している私も様々な公演を企画し実施してきたが、いわゆる経験や感に頼り判断をすることも多々あった。いわゆる実践での経験によって学んだことを応用していることとなるが、時々「どんぶり勘定」という言葉が頭の中を過ぎることがある。私が考えるどんぶり勘定とは、いい加減という代名詞ではなく、細部が煮詰められない段階での交渉において大まかな予算を把握するための方策であり、そのことにより出演交渉や、チケットの販売計画がスムーズに進められるメリットもある。16年間オーケストラの現場を経験し、演奏者以外の立場に身を置いて学んだことは、ある部分理屈ではなくその都度スピーディーに結論を出し、次のステップへ事業を進める考え方とでもいうべき方法として頭の中に染み付いている。このような取り組みが良いか悪いかは別にして、総予算を厳格にまもり、支出項目の科目間流用を認め柔軟に対応する姿勢が必要ということである。

そして、実際に芸術のマネジメントを行う場合の事業担当者は、芸術に対する理解(感性)と、それとは相反する事務処理能力(知性)で、芸術家に積極的に献身する心構えがしっかりしていること。金銭感覚・予算把握、実行できる行動力、専門知識を吸収し続ける気力も必要である。その上で需要を喚起させるマーケティング能力、先取り精神と共感能力、統率力などが求められることとなる。