2025年 11月号「推しこそものの上手なれ」
籾山 勝人
近年は「推し」というワードが常用語化している。アニメ、漫画、アイドル等のサブカルチャーでスラング(俗語)として使われていたものが一般化したのである。「推し活」は、個人が推しているヒト、モノを応援し喜びを感じる活動。
先日もスタッフから本屋大賞の「成瀬は天下を取りにいく」の聖地巡礼に滋賀県まで行ったと聞いた。アニメがヒットすれば登場する場所の巡礼先に「推し活者」が殺到し地域経済まで影響を与える「推し」。

10月19日に開催された「バンドネグロ タンゴカルテット」ライブ。ポーランドから初来日した若き4人組の一コマ。演奏の合間にMC(お話)が入るのだが流ちょうな日本語で話される姿に誰もが初来日に向け日本語を学校で勉強してきたものと思いきや言葉を発することはできても聞き取りができないことが判明。あれだけ鼻濁音も日本人と間違えるほどの発声なのにと思う。彼らの日本語の発声はすべてアニメで学んだと聞き、国境を越えた「推し力」に感心しきりのコンサートであった。
「推し」が一般化したのは数年前だが、ゆめたろうプラザを20年間「推し」ていた開館時からの古参が10月末で去った。ゆめたろうプラザを成長させ、「推し」の企画を数知れず町民に提供してきた。誰もが一つ二つの「推し」はあるものだが、それを大衆(町民)に浸透させることは努力だけではできない。
その中の人は、いろんな劇場で見かけた。100人も入ればいっぱいの劇場から2500人の大劇場などなど。ジャンルも演劇、音楽、舞踊、古典、講演会、シンポジウム等、この人の「推し活」は計り知れないと思った。

その「推し」は自分のためだけではなく、ゆめプラや武豊町に向けたもの。この人の「推し活」はもしかすると「武豊町を全国に推す」ためだったのかもしれない。
我々も「この人」を見習って、ゆめたろうプラザを「推し」の巡礼地にしたいものだ。
おしまれて去った「あの人」に「おしかれさま」、いや長い間「おつかれさまでした」と。
これからもおしまぬ愛情をゆめプラに捧げていただきたい。お・し・ま・い。