2021年 2月号 「芸術に関わる人の社会での活躍について」
大学の学びの中で芸術を志そうという若者が少なくなっている。保護者から就職に不安を感じる声が聞かれ、卒業後の進路に確信が持てないことが影響しているようである。
また、コロナ禍の中で芸術分野に関わる方々が影響を受け、公演が中止や延期となる困難な状況が続いている。オンライン配信など新しい取り組みが行われているが、先行きが不透明な状況である。
大学生の就職については社会状況により有利な学部・学科が変化するが、現在は理工系や医療・福祉・看護系が有利で、文系は苦戦を強いられている。芸術系は学生数が少なく、就職が不安定な分野として捉えられている。
1月10日に大學新聞第187号に、文部科学省令和2年度学校基本調査報告書を資料とした「大学における芸術系分野卒業者の就職内訳」が載っていた。就職内訳では、一般的に芸術の世界は、進学しても希望する職種に就いて生計を立てることが非常に難しいと考えられているが、芸術に関わる人の進路や社会での役割について同調査の結果を見てみると、必ずしもそうとは限らないことが理解できる。
芸術系学生の全卒業者数15,658人のうち、就職者(含む自営業主等)は10,102人(64.5%)である。職業別の詳細は、「専門的・技術的職業従事者」は5,780人(57.2%)と、その他の「事務従業者」の1,694人(16.8%)や「販売従業者」の1,626人(16.1%)を引き離し過半数を超えている。
大学で学んだ専攻を生かした「音楽家・美術家・写真家・デザイナー・舞台芸術家」となったのは3,644人(36.1%)、「教員」は503人(5.0%)で合計すると41.1%に達し、実に4割の人が芸術に関連した就職を果たしている。そして、情報処理・通信技術、建築・土木・測量技術を含めると5,780人(57.2%)となっている。
この状況を他の系統・分野の合計573,947人と比較すると「専門的・技術的職業従事者」は173,604人(38.9%)で、少なくとも在学中に学んだ専門性で就職を果たす割合は、芸術系分野の卒業生のほうが18.3ポイント高くなっている。
芸術・表現型分野の主な職業も、従来の音楽系、美術・工芸系、デザイン系(建築・インテリアを含む)、演劇系に加え、最近では音響・映像・照明系、声優・ダンス系、まんが・イラスト系、マルチメディア・ゲーム系などに広がり、分野横断的に対応できる人材を求める流れが加速している。
芸術系分野の卒業生の進路は専門以外でも堅調で、感性を生かして社会で活躍する実態が明らかになっている。