2020年 6月号 「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う劇場・ホールの今後」
少しずつ劇場・音楽堂の運営が動き出したようである。海外では6月5日にウイーンフィルハーモニー管弦楽団が3か月ぶりの演奏会を行いNHKテレビで放映された。観客はオーストリア政府の感染防止対策に従い100人に限定されていた。
舞台上は通常の編成で古典派作曲家の作品で2管編成の55人程度で相当な密状態であったが、楽団長が事前に演奏者の飛沫が飛ぶ距離を測り、75センチメートルとして公演を再開したようである。
日本では9日に日本フィルハーモニー交響楽団がサントリーホールで観客を入れずに有料のライブ配信を行った。通常フルオーケストラが配置される舞台に21名の弦楽合奏編成の配置で、密集、密接を避ける配慮がされて無観客で行われた。
これから多くの劇場・ホールで事業が再開されることになるが、客席については全国公立文化施設協会による「音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に基づいた予防策を取り、当面収容人数の半数までの入場で実施することになるだろう。
地元の名古屋フィルハーモニー交響楽団は、6月末までの公演を中止し、7月初旬のしらかわシリーズ公演を無観客で開催し、演奏者、客席の間隔、お客様入場時の対応等について実地で検証して映像を収録して後日配信を予定している。
7月中旬の定期演奏会でプログラムを変更し、入場者は関係者を含め収容人数の50%である900人を上限として開催するようである。
劇場・ホールで行われる公演は、音楽、舞踊、演劇、そして芸能や演芸などがあるが、音楽公演について考えると、種類は大きく器楽と歌唱に分かれる。歌唱は同一方向を向いて声を出すため、左右に仕切りを置き、前方を2メートルあけることで可能である。
器楽のオーケストラや吹奏楽の大編成は、弦楽器、管楽器、打楽器で演奏するが、弦楽器は弓と弦の摩擦で音を出すため、奏者がマスクして演奏することで影響はない。管楽器は楽器に息を吹き込んで唇やリードを振動させて管の中の気柱を共鳴させるため、管内で抵抗があり、飛沫飛散は2メートル以下となる。(理論的に確立されている訳ではないが、演奏者が実験を行っている例が散見される。)打楽器は体鳴楽器としての鍵盤打楽器やシンバルなどは本体が発音体なので問題がない。膜を張った膜鳴楽器ではティンパニは上下に、大太鼓は斜め横方向に空気が振動する。
今後は、舞台上の実演家の公演が従来のように可能か、客席が座席人数分収容できるかが大事である。予定していた曲目や演目を変更し、舞台に空間を広げて実施する方法で、客席の人数を徐々に増加することで従来の形態にすることが可能になる。年内に客席を100%使用できるか確証はないが、それに向けて活動を高める必要がある。