2026年 10月号「住みよさの基準はなんだろう」
籾山勝人
9月初旬、北海道で「武豊町の取り組み」を紹介する機会があり、札幌市内にある札幌市教育文化会館に行ってきました。こちらの会館は、舞台照明でクラシックバレエの全国ツアーをしていた時に訪れたことがあり、懐かしさと劇場の歴史を感じたものでした。

武豊町の事例発表の前に、北海道中央部に位置する上川郡東川町の前町長との対談もあり、「写真の町」として知られる東川町に事前調査と交流を兼ねて2日間滞在させてもらいました。
“滞在させてもらった”というのは、町内に移住促進のため短期・長期滞在施設がいくつもあり、1年間居住体験して移住してきた家族や、毎年夏に開かれる「写真甲子園」が縁で移住し、町職員になった方もいると聞いたからです。今も町民は微増しており、現在の住民8,600人はそれぞれ幸せに暮らしています。





蛇口をひねれば美味しい天然水が出てくる。町のいたるところに芸術作品が置かれ、冬場の健康維持のため、サウナや温泉、トレーニングジムや室内歩行場が充実している。さらに、小学校には最大270メートルの廊下があるなど、暮らしと健康と芸術の調和が、「住みよさランキング3年連続1位」の理由を物語っています。今風でいえば、まさに「ウェルビーイングな社会形成」そのものでしょう。
さて、武豊町の事例発表では、「劇場を支えるNPOと行政のカタチ~調和と不協和音」と題してお話しさせてもらいました。ざっくりまとめると、武豊町には「醸造文化が住民の時間を生みだし、祭り文化が住民の熱い心をつなぎ、企業連携が物事の行動を起こす」、このような風土があり、そこからNPO団体が生まれ、紆余曲折を経ながらも行政とともに劇場を育て、支え、持続させてきたのです。

先の東川町もそうですが、「住んでいる幸せの価値観は人それぞれ」であり、「幸せを感じる基準も人さまざま」です。
ゆめたろうプラザを含め、どこの劇場も、心の豊かさと幸せを育む「地域のよりどころ」でありたい。効率や便利さだけではない、人と人とのつながりや温もりを感じられる空間こそが、これからのまちづくりや劇場運営にとって一番大切な基準ではないでしょうか。
文化や芸術が日常に溶け込み、誰もが自分らしく誇りを持って暮らせる社会。そんなウェルビーイングな未来を目指して、これからも現場の足音を大切に歩み続けていきたいと思います。