― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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10月号 アーツマネジメント教育の現状

館長 竹本義明

マネジメントとは、企業や組織の管理・運営に関わる業務のことを指すが、芸術や教育の分野でマネジメントという文言が使用されるようになったのは1990年代になってからである。欧米では1970年代から学校や病院、それに舞台芸術分野の運営が行き詰まり、新たな運営体制の構築を余儀なくされたことにより、運営に関わるノウハウの改善に力が注がれ、アーツマネジメントの必要性が叫ばれるようになった。

音楽教育においてアーツマネジメントに関わる取り組みを最初に始めたのは、米国ニューヨーク州にあるイーストマン音楽院である。同音楽院はジュリアード音楽院と並び称され、すでに世界で活躍する一流の演奏家を数多く輩出し、社会的に高い評価を得てきたところである。しかし、音楽院は学生の就職先である演奏家が飽和状態になったことで、新たな就職先を開拓する必要に迫られるようになってきた。「演奏家でも音楽教育者でもない人材の育成に力を注ぐべきである」という方針のもと、アーツマネジメントを行う立場の人材を社会に送り出すために、様々な改革に取り組んできたところである。

日本における芸術に関わるアーツマネジメント教育は1990年代になってから一般大学での講座から始まり、音楽大学においてアーツマネジメントに関係する学科・コースが開設されてきた経緯がある。音楽大学では、学科・コース開設で美術館や博物館に勤務する学芸員の資格と同等の資格化に向けた取り組みを目指す動きもあるが、実現への道筋を描くことが出来ていない。学芸員については、博物館法の第4条第3項に定めがあり、「博物館に、専門職員として学芸員を置く」とされている。ここでいう「博物館」とは、歴史、芸術、民族、産業、自然科学等に関する資料を扱う機関のことであり、「博物館」の名称を持つ施設のほかにも美術館なども含まれる。現状は資格を取得しても活躍の場が少なく力を発揮する機会が限られている。このような状況では、音楽分野の資格化が実現しても活躍の場が保証されるとは考え難い現実がある。

演奏家をマネジメントする音楽事務所の最近の傾向として、社会的評価の定まっていない若手演奏家にまで手を広げ、マネジメント対象が質から量へとシフトしているようだ。そして、音楽家の中には自らがマネジメントを行う者も増え、マネジメントの重要性が演奏家の中に浸透している。それとともにアーツマネジメント教育の重要性を見直す教育機関が増え、更にアーツマネジメント教育の実践の場として公立文化ホールが、インターンシップ(実習訓練、体験就業)を受け入れアーツマネジメント教育をサポートする事例も見受けられるようになってきた。文化・芸術の発展のためには人材育成が急務であり、なかでも音楽芸術分野における実践教育は不可欠であり、文化ホールの積極的関与が望まれる。