― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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11月号 マーケティングの一考察

館長 竹本義明

文化施設・ホール(以後ホール)におけるマーケティングとは、鑑賞者ニーズを的確につかみ事業計画を立て、最も効果的なチケット販売方法を選び、販売促進によりあらかじめ予測した事業収入を確保し公演を成功に導くための方法である。しかし、芸術分野では事業が営利として成立する事が困難であることから、企業を対象とするマーケティングと一線を画す取り組みとなる。

舞台芸術の公演を行うホールにおけるマーケティングは、鑑賞者や施設稼働率の増加を目的としているが、事業は主催者がイニシアチブを強めれば鑑賞者ニーズから離れる傾向があり、鑑賞者ニーズに配慮すれば、迎合し芸術的な立場が失われることとなりそれぞれの兼ね合いが難しい。マーケティングの資料となるアンケートは、従来から事業の料金設定や鑑賞者ターゲットをどのような世代とするのか、また性別あるいは来館者の住所がどうなっているのか、さらに、チケットの販売方法やホールの立地条件、会場席数についても鑑賞行動に影響があるとされてきた。
本館は開館以来鑑賞事業のアンケートを取り続け、それに分析を加え出来るだけ次年度事業に反映するようにしているが、それでもマーケティングの有効性を十分確信するまでに至っていない。今後、会館独自の質問項目を充実し実施しなくてはならないと考えている。

マーケティングが専門である慶応義塾大学名誉教授村田昭治氏は、マーケティングをひと言で表すと「子どもを産み育てること」であると言っている。(日経ビジネス2008/11/3日号)『愛情がなければ子どもは育ちません。商売も愛情をベースにしなければうまくゆかない、これからの商売は、「顧客満足:カスタマーサティスファクション」だけでは不足で、「顧客幸福:カスタマーハピネス」を追求しなければならない』と言っている。そして『多くの企業が競って効率化を進めていった結果、個性のない店が蔓延し、どこの店で買っても大差ないように思われるようになりました。いわば「商売のコモディティー化(commodity:日用品)」が進んだ結果である。』と述べている。

多くのホールで事業のコモディティー化が進み、個性のない事業が実施され観客・来館者が低迷する原因となっているのではないか。人生を豊かにするもの、精神的満足感を実現する芸術の原点に立ち返って、それぞれのホールが特色ある事業の企画立案を実施することが重要であろう。さらに、マニュアルを重視した来館者との対話について、再考することも必要ではないか。多くの人々が来館するホールにとって、来館者との対話を自然なものとすることが望まれる。そして、何も目的が無くともぶらっと行きたい場所、たまり場としての空間であることが必要であり、地域交流を促進するために、ゆとりが感じられる運営を実現させたいと考えている。