― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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3月号  公立文化施設の中央と地方の格差

館長 竹本義明

館長を引き受けて1年が経とうとしている。本館で実際に運営(マネジメント)を行って、会館関係者の事業に対する取り組みが積極的で認識を新たにしているところである。平成19年度に実施された自主事業は34本、20年度も32本を予定している。最近、会館の運営について評価の必要性が言われるようになってきたが、昨年公立文化施設における政策評価のあり方について、「公立ホール・公立劇場の評価指針」と題した報告書が財団法人地域創造から出された。本館では、開館時から「武豊町文化創造プラン」で評価の在り方を検討し、館長による内部評価と運営委員会による外部評価を行っており、館長がアニュアルレポートを作成している。今後、中長期評価についても実施し評価に基づく事業の改善を進めたい。

先月、滋賀県の公立文化施設について大きなニュースが流れた。京都新聞によると、福祉予算捻出のために、「びわ湖ホール(大津市)を約半年間休館し、その間に民間会社も含めた管理者を公募して自主運営費を削減することなどを検討」するという。そして、県議会において施設のネーミングライツも検討するという知事の答弁があった、ということである。また、今月は、日本経済新聞で「青森県黒石市は4月、市民文化会館を休館する。約1100席の大ホールを備え、市民がコンサートなどを楽しむ町の中心施設。築25年の文化会館は間もなく改修時期。だが06年度に7億2000万円の赤字を出した市にとって、3億円の改修費は荷が重い。休館すれば年間6000万円の経費節減の試算が背中を押した」との記事が出ていた。

これらは、日本の文化政策にとって大変な危機であり、文化芸術活動の根幹を揺るがす大問題であると思っている。国が2001年文化芸術文化振興法を制定し、2007年には、第2次「文化芸術の振興に関する基本的な方針」において、我が国が、今後一層文化芸術を振興することにより、文化芸術で国づくりを進める「文化芸術立国」を目指すことが必要であるとしているが、国の文化芸術重視の施策の中で、地方の公立文化施設が厳しい環境に置かれ、中央と地方の格差が生じている。全国にびわ湖ホールと同規模の施設があるが、今後自治体で同様な動きが加速し、地方の老朽化した施設を抱える財政の厳しい自治体において、黒石市のような決断をするところが出るのではないか。愛知県では、全国公文協加盟95施設の40%が1000席を擁し、厳しい状況に置かれる可能性が高いと感じている。

びわ湖ホールが行ってきた自主公演は、同規模の施設と比較すると自治体補助金に占める事業予算が潤沢であり、全国的にも評価されるオペラをはじめとする舞台芸術公演が可能となったのであろう。しかし、この事業が滋賀県民や大津市民にとって支持を得られる事業であったのか甚だ疑問が残るところである。数年前、東京都で同様な事例が起きたことは記憶に新しい。東京都交響楽団が都の補助金削減で規模を縮小し、楽団員の待遇が大幅に切り下げられた。補助金の支出目的が都内公立学校での音楽鑑賞教室実施であったが、楽団が大編成による芸術的価値の高い演奏に活動主体を置いたため、東京都の方針に対し都民はもとより、日本オーケストラ連盟も都の方針を撤回させる効果的な運動を展開するに至らなかった。

今回のことは、日本の箱物文化行政の不備が明らかになった例であり、今後、行政側の方針について関係者が「びわこホールを応援する会」を中心に撤回を求める運動を進めるように聞いているが、現状では事態が好転する可能性は少ないと思われる。びわ湖ホールが存続するには、広範な市民運動を起こし、事業重視の企業型NPOのような団体による管理・運営を委ねることもやむを得ないと考える。
極めて芸術性の高い事業であっても、経営的な感性を持って運営を行うことが求められ、地域の文化的財産である公立文化施設の継続した運営を実現するには、住民の目線に立った事業の視点が必要不可欠であろう。びわ湖ホールや黒石市の例は、芸術を享受する立場の人々への配慮が欠けていたことが、このような事態を招いた要因と考えられ、公立文化施設はバランスの良い事業への取り組みを実施し、それぞれの施設が特徴を出してゆくことが重要と考える。