― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

ゆめたろうプラザ

4月号  公立文化ホールのフランチャイズ

館長 竹本義明

欧米では、「コンサートホール」にオーストラが、「オペラハウス」には歌劇団や合唱団、そしてオーケストラやバレエ団が所属している。また、「劇場」には劇団が所属し、そこを本拠地に活動しハードとソフトが密接な関係を保ち相互に発展してきた。一方、日本では貸館を目的とする施設が全国各地に整備され、芸術創造団体が独自に活動してきた歴史がある。
最近、文化ホールを取り巻く社会状況が一段と厳しさを増し、一部老朽化した施設では改修予算が確保できず廃館を余儀なくされ、比較的新しい施設でも事業予算の削減により貸館を強いられる状況となってきた。そのような中で、首都圏に新ホールがオープンし、次の計画も進行中で民間ホールはよりビジネスとしての施設設置に動き出し、地域との繋がりを重視し商業施設などと一体化した取り組みを行っている。

ホールや劇場は、芸術創造団体を併設することで、その特性や魅力を最大限に発揮でき、特にオーケストラとの関係は重要であると考えている。1989年に東急文化村オーチャードホールと東京フィルハーモニー交響楽団の間に、日本で初めてフランチャイズ運営形態の導入が実現した。その後、1994年杉並公会堂と日本フィルハーモニー交響楽団が市民のためのアウトリーチとして友好提携を結んだ。1997年には墨田トリフォニーホールが新日本フィルハーモニー交響楽団とフランチャイズ提携し、同ホールのステージで日常の練習と公演を行うという日本初の本格的フランチャイズを導入した。準フランチャイズの取り組みとして、1998年から東京交響楽団が新潟りゅーとぴあで年5回の定期演奏会を開催し、この関係性を生かしロビーコンサート等を実施している。また、2002年から同交響楽団がミューザ川崎シンフォニーホールとフランチャイズ提携を結び年間15回の演奏会と川崎市内の公共スペース等でアンサンブル等を実施している。他には兵庫芸術文化センターと専属オーケストラ、石川県立音楽堂とオーケストラ・アンサンブル・金沢のレジデント、フランチャイズ、江東区ティアラこうとうと東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団提携。このようにホールと交響楽団の提携は、首都圏の自主運営オーケストラが複数の施設と提携を結ぶことで、演奏会数を確保し運営の安定化を図っている。ホールは事業運営において選択肢が広がり、活性化が実現している。

新日本フィルハーモニー交響楽団は、1997年から三重県文化会館と親密な関係にあり、同館を関西拠点ホールとして毎年2公演を行い、楽団員による地域での演奏指導を行っている。今年4月には、岐阜県可児市文化創造センターが、同交響楽団と地域拠点契約を締結し、ワークショップやアウトリーチに取り組むことが報じられた。ホールがフランチャイズ契約を締結するには、それなりの予算の確保が必要であるが、この地域には4つのプロフェッショナルオーケストラが活動しており、全国的にも恵まれた環境にある。文化ホールは、地域のニーズ、文化ホールの規模と予算等の条件を勘案し、オーケストラとのフランチャイズを実現してはどうだろう。単独では無理なら複数館で対応することも可能であろう。それにより、地域の創造活動や鑑賞活動が促進される効果が期待できることは間違いないと考えている。