8月号 公立文化施設のもう一つの役割 ~公民館との連携~
館長 竹本義明
今までの館長便りで、地方の公立文化施設の役割について述べてきたが、そもそも公立文化施設は設置にかかる法的な基準は存在せず、設置する地方自治体がそれぞれの裁量で施設を建設してきた経緯があり、実際に行われる事業について様々な問題が指摘されている。設置の意義は地域への文化的貢献や住民が芸術文化に接する機会の保障が主な役割であるが、1990年代以降新設される公立文化施設は、各種講座や教室、そしてギャラリーが運営できる施設が併設され、音楽や演劇を鑑賞するほか気軽に施設を訪れる住民が増加し、施設設置の目的が達成されてきた。特に、各種講座に対応する練習室や教室、バンド練習に使用するスタジオなどは、いずれも稼働率が100%近い数字を達成している。
本来講座や教室に対応する施設としては、地域ごとに公民館があり、新設の公立文化施設がそのような機能を併設するまで、地域の中心的な役割を担い今でも十分機能している施設は少なくない。公民館は、社会教育法に基づき、住民の教養を高め、文化の向上を図るために市町村が設置する社会教育施設であり、社会教育の振興のため、国や地方公共団体が遂行すべき任務や社会教育に必要な措置を定める法律が根拠にあり、住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的としている。また、公民館では、社会教育主事が社会教育分野を担当し、教育公務員特例法に定められる「専門的教育職員」として、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与えることとなっている。
公立文化施設(美術館及び博物館を除く)に専門職員が配置されていないことを考えれば、公民館の方が運営の組織機能が充実していると言える。公立文化施設は、芸術文化を主目的とした劇場ホールとしての位置付けと、地方自治体が設置した公共施設としての役割の両面を担うことが期待されているが、いまや、社会環境や地域を取り巻く状況が大きく変化し、少子化による住民構成の変化と住民ニーズの多様化、そして近隣に建設された競合施設、市町村合併による文化施設配置の重複により、公共施設としての役割が分散し縦割り行政の弊害が出ている。各自治体が統一的で充実した文化行政を行うには、公立文化施設と公民館との連携が望まれるが、この分野に対する研究も進んでいない現状がある。
武豊町は、2003年の「武豊町文化創造プラン」で、パートナーシップ理念として個人、行政、NPO、文化団体、教育機関等町内外の人や機関が連携することを目指すこととし、文化施設について、文化創造施設(町民会館)と社会教育施設(公民館、図書館、歴史民俗博物館)と定義付け、町民会館の運営計画の運営方針の中に、事業・運営担当者の多様性が記載されており、特にNPOに注目し、その力量に合わせた事業や運営の業務委託が出来るよう規定等の整備を進めるとしている。まだ、不十分であるが、公立文化施設の設置目的の達成のため、ホール機能重視の施設と公民館の連携が本館創造集団の活動を中心に徐々に成果を上げている。多くの自治体では、公立文化施設と社会教育施設の連携が良好に機能しているといい難く、是非連携を進め地域文化に貢献できる体制を構築して欲しいと願っている。