― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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9月号 身の丈にあった会館運営

館長 竹本義明

いたって当たり前なことであるが、劇場・ホールは事業を行ってこそ、その機能が活かされ、存在意義が果たされていると言える。しかし、最近は地域の劇場・ホールの事業が目立って少なくなっている印象がある。とくに建設されて20数年を経た施設において、指定管理者制度の導入、事業費の削減、そして、社会経済の先行き不安などによる芸術・文化の住民ニーズ低迷、加えて行政による文化振興政策への積極性の欠如などが原因としてあげられる。

財団法人地域創造の「地域文化施設に関する調査報告書(2001)」によると劇場・ホール機能を持つ公立文化施設は全国で2,465、ホール数は3,008館とされ、これら施設の設置主体を団体別に見ると、都道府県156(6%)、政令市201(8%)、市町村2,108(86%)となっている。そして、設置主体団体別の平均自主事業費は都道府県6,667千円、政令市4,013千円、市町村1,766千円、全体平均で2,266千円となっている。また、平均自主事業件数は都道府県14.3件、政令市13.3件、市町村9.4件となっている。

本館は、設置以降町民会館費は2億円、人件費25%(5,000万円)、一般管理費15%(3,000万円)、維持管理費45%(9,000万円)、事業費15%(3,000万円)で推移している。全国平均から見ると市町村レベルの施設であるにもかかわらず実際は倍近い事業予算により、政令市レベルである。事業の本数も2007年度は31事業で、鑑賞事業は有料と低料金、無料を含め22本実施している。それにより本館の2つのホールの2007年度稼働率は平均63%である。

最近は、新設劇場・ホールの事業の華々しさが目立ち、マスコミにも取り上げられるが、実際に鑑賞行動を行う地域住民のニーズは、マスコミへの露出度数が多い出演者が好まれる傾向にあり、ホールとしても入場者確保の観点からそのような事業を優先させることとなっている。市町村レベルの施設は、都道府県や政令市の事業のコピーを実施しようとする場合が多く、地に足のついた事業でないことが多く、地域の公立文化施設としての社会的役割と存立意義を考えると、身の丈にあった事業というものの確立が重要であることに気がつく。と言っても、劇場・ホールにマネジメントを行う人材が配置されている施設は少なく、事業の適正価格把握や運営のノウハウを欠いたままでは、外部事業者の言いなりになるしか方法はないようである。

しかし、そのような状況の中でも、地域の施設である市町村レベルの劇場・ホールは地域ニーズを把握した事業費の効果的運用に努めるべきであろう。それには、1事業あたりの費用限度額を厳格に設定し、企画にあたっては各分野に配慮したバランス良い展開を心がけ、担当者が交渉能力を磨くことが必要である。事業の実施には、リスク管理を徹底し、金銭感覚、予算把握、需要を喚起させるマーケティング能力を駆使し、実行できる行動力を持つことが望まれる。それにより、事業回数を増やすことが可能となり、地域の劇場・ホールが将来的に存立意義を継続して維持できることと考えている。