12月号
国の文化関連予算の縮減傾向が強まる中、地方自治体においても文化・芸術関係予算の削減が加速し現実のものとなっている。地方の公共文化施設にとって、従来の予算規模を実現させる活動を継続させることはもちろん必要なことであり、一方で現実的な対応を行なう必然性が求められている。
このような状況の中、芸術実演団体の公演料金が低減傾向になっているようだ。公演単価を下げて回数を確保するための方策であり、当然収益が減ることとなり以前より回数を増やすことで団体の活動を維持することが目的である。
地域公共ホールにとって、地域住民の鑑賞動向が徐々に鈍化していることが気になる。ここでも、住民の意識が多様化し鑑賞行動が多種類の公演に分散している傾向が窺え、鑑賞回数や芸術鑑賞に拠出する単価の落込みが顕著になっている。このような状況で、地域公共ホールの運営を考えた場合、事業運営において事業費回収率80%を実現することが、一つの会館事業活性化の目標であろう。それには、事前にマーケティングを行い綿密な計画を立て実行することが求められる。
それでも、会館が主体的に実施する芸術性の高い事業、あるいは地域住民にとって必要と思われる事業では、事業費回収率50%を上回ることは至難の業であり、公演事業にスポンサーをお願いし、実現することも現状の経済状況では困難なことと言わざるを得ない。
武豊町民会館では、2007年からの3年間の全ての鑑賞事業の事業費回収率は、いずれも平均55%を越えており2009年度は58%である。着実に実績を上げていると言える。
会館主催の鑑賞事業の会員組織である「ゆめプラメイト」は、この数年会員数が輝きホールの定員と同等の650名前後で推移していたが、最近のJ-ポップ系の公演の実施もあり、現在は830名までに増加している。この水準を維持することが出来れば、余裕を持った鑑賞事業の運営が可能になると考えている。
さて、本館は公演事業の他に人材育成として講座を行っているが、今年度の芸術と科学のハーモニー事業として特別講演会「描きながら発見する植物の不思議」を予定している。講師は北海道石狩市を拠点に活動をしている植物画家の安藤牧子氏で、1993年第9回植物画コンクールで文部大臣賞を受賞されている。以後全国で個展を多数開催し好評を得ている方である。植物画(ボタニカルアート)は、写真のない時代に植物を精密に描くには、科学的な知見が必要であり、それが次第に芸術性を追求するようになり、現在では多くの愛好者が存在するようになっている。各種講座の展開も本館の特色であり、2011年度も鑑賞事業を含め講座の実施で、会館が地域に認知されるよう職員・スタッフ一同努力したい、と考えている。