8月号
館長 竹本義明
今夏は、大変な猛暑が続いているが町民会館の事業が順調に遂行できている。その中で、同時に2010年度春の音楽祭の実施に向け、従来より早く実行委員会の活動も活発化しており、4回目となる音楽祭の成功に期待が持てる。
さて、先日地元常滑市民会館の閉館のニュースが流れてきた。知多半島5市5町の中でも1000席を擁する立派な施設として、地域に密着した事業を行ってきたが、最近は施設の老朽化に加え、市の財政難による管理・運営経費の捻出に苦労し、ついに市民会館の閉館を決めたと言うことである。
武豊町が実施する春の音楽祭は、5回目となる2012年度は知多半島全域で「知多半島春の音楽祭」として実施するべく計画していただけに残念である。現在、愛知県に1000席を擁する公立文化ホールが30数館あるが、全国と比較して財政力指数が良好だった愛知県においても、昨年は税収減により愛知県と3自治体が地方交付税交付団体となり、地元の文化ホールが影響を受けないことを願うばかりである。
今月は、音楽コンクールが横浜鶴見区にある鶴見会館で行なわれ、審査のため横浜を訪れた。横浜は現代的で機能的なホールが多く建設されているが、一方で鶴見会館のような老朽施設が散在し、それなりに利用されている。音楽コンクールを実施する団体にとって、比較的簡単に事前に利用予約ができ、重宝するホールの一つである。しかし、今年11月をもって廃館になることが決定しており、今後の代替施設の建設について、自治体から明確な方針がなく不便を感じる利用者が存在するようだ。
また、一緒に審査に携わった千葉県我孫子在住の審査員から、我孫子市民会館はすでに2007年に閉館になったと聞いた。そして跡地が病院建設に利用されるように決定したが、市民の間から文化ホール建築の要望が強く、我孫子市文化施設検討委員会による報告書が出され、建設に向けての機運が盛り上がっている、と現状の説明があった。
以上、紹介したいずれの施設も1000席を超える席数を擁する施設であり、箱物行政の象徴的建築物であったが、社会環境の変化に伴って施設整備費用の捻出が困難となり、利用者の施設に対する意識も多様化する中で、閉館を余儀なくされたものである。最近では、施設に専門性を求めるようになり、改めて文化施設建設の是非が問われるようになっているが。
施設建設の実現に向けては、住民意識の結集が行動と結びつくことによって、実現性が出てくるようになっているといえる。建設だけでなく、運営にも市民が関与することで、継続的な運営が可能となり、地域の文化芸術環境が改善することになっている。