3月号
「武豊春の音楽祭2010」が、2月20日の合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」に始まり、3月6日の「名古屋フィルハーモニー交響楽団」の演奏で無事に終了した。第4回目となる音楽祭は、市民企画が2週間にわたり繰り広げられ、延べ55団体58公演が行われた。
開催前2月5日には、プレ企画で「綾戸智恵コンサート」が加わり、全体として内容の豊富さ、幅広く多様なジャンルでプロアマを問わず出演者が演奏する豪華な音楽祭となった。有料公演の「熱帯ジャズ楽団」はほぼチケットが完売で会場が熱気に包まれ、ゆめたろうプラザの観客が総立ちとなり、老若男女を問わずとても盛り上がった演奏会となった。
今回の武豊春の音楽祭は、2012年「知多半島春の音楽祭」開催に向けた取り組みであったが、十分に手ごたえが感じられた2週間であった。予想以上に成果があったのは、53団体の市民企画に応募し公演を行って頂いた各団体が、演奏内容の質の高さ、運営における取り組みが充実していたことである。
公共文化ホールが、会館自主事業のために2週間にわたって施設を一般に開放することは、一般的に行政が実施する取り組みとしてはハードルが高いと感じている。(会館の自主事業として55団体に公演を依頼する形をとり、使用料は徴収しないこととした。)しかし、本館が掲げる施設の活性化、文化発信、そして人材育成の目的に合致するため、職員・スタッフの苦労は並大抵ではなかったが、実施して良かったと考えている。
以前の館長便りにも述べたが、若い世代の演奏家は会館・ホールが演奏家を育てて欲しいという願望を持っており、一方で会館・ホール側は、演奏家が施設を活用して欲しいと願っている。今回の市民企画コンサートは、そのような両者の思いが一致し結実した結果として、大いに誇れる事業であったと感じている。
今後アンケート等を精査し様々な視点で評価を行い、音楽祭に参加していただいた演奏者の方の今後の活用を企画してゆきたい。市民企画は、有料と無料の公演があったが、特に全体の36%の有料公演ではチラシ、チケット作成から当日の運営まで予想を超える取り組みが行われ、コンサート開催に関わる演奏者の姿勢が確実に変化してきていることが実感できた。そして、初めて本館で演奏を行なった団体の中には、ホールの施設・設備や音響が気に入って、自主公演を計画したいという意見もあり、主催者としては嬉しい出来事であった。
地域で活躍する演奏家の発掘により、会館の継続的な事業運営が維持でき、多くの鑑賞者に会館を知っていただくとともに、他館への演奏紹介なども可能になり、益々活性化することを期待している。今回実施した音楽祭の成果として、演奏者が純粋にマネジメント能力を身に付け、応用力を駆使してそれぞれの活動が発展することを願っている。