― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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5月号 公共施設の採算性について

最近公共施設の採算性について議論がされるようになっているが、日本における文化施設・ホールの大半は公共施設であり、民間施設は少ないという現状の中で、行政が設置する公共施設は、収益性より公共性を優先させて建設されてきた歴史がある。最近受益者負担を求める声が大きくなっていることが気がかりである。

2003年からの指定管理者制度の導入により、公共施設を民間が管理できるようになり、今では文化施設・ホールの約半数が指定管理者により管理・運営されている実態がある。そのような中で採算性が求められるとなれば、大幅な施設使用料金の引き上げ、利用条件の緩和の措置が必要となる。

それでも、将来の施設維持に伴う保守、修繕等の費用の捻出をどうするのか、そして、評価が困難な事業運営に対する公共施設の採算性については、多面的に議論し結論を出していかなければならない。一方で民間から管理費用を調達するため、公共施設のネーミングライツ(命名権)が導入されるようになっているが、必ずしも行政が期待する効果が出ているとは言えない現状がある。このような状況では閉館を余儀なくされる施設が増えるのではないかと心配している。

公共施設を使用する頻度の高い演奏家集団であるオーケストラも、行政からの補助金によって活動が成り立っているが、公共文化施設同様補助金が実際に削減されている。2005年東京都は外郭団体への補助金一律3割カットを打ち出し、東京都交響楽団の補助金を14億円から10億円にカットし、楽団員については終身雇用制度から有期雇用制度を導入した。

また、2008年大阪府は財政難から大阪センチュリー交響楽団への補助金をカットする方針を打ち出し、2010年大阪市では、予算編成で「文化は行政が育てるものではない」として、大阪市音楽団の市直営方式の廃止を打ち出した。これらの団体は運営予算に占める補助金の割合が大きく、その影響は計り知れないものがある。

全国のプロオーケストラの中で、運営予算に占める補助金の多いオーケストラは群馬交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団、オーケストラ・アンサンブル金沢、そして名古屋フィルハーモニー交響楽団であるが、自治体首長の姿勢が変化することで大きな影響が出ることが予想されている。

そもそも日本は文化予算がフランスや韓国に比べて極端に少なく、米国のように民間からの寄付の優遇制度も整っていない中、補助金だけが一方的に削減されることにより、オーケストラの活動が維持できない。欧米式に民間の寄付金と事業収入割合を増やすか、活動エリアの住民に対する公演と会員組織を充実させ、存立の必要性を住民と一体となって行政に働きを続ける運動を継続する必要がある。また、芸術の需給バランスの重要性を楽団員が意識し、必要な行動を取らなければいけない状況が迫っている。