― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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6月号 現代美術を語る二人の対談

先月、名古屋芸術大学で客員教授の蓑 豊氏の講座があった。当日は蓑氏の友人である現代アーティストの村上 隆氏を交えての豪華な対談となった。蓑氏は金沢21世紀美術館初代館長として日本における美術館革命を実現し、現在兵庫県立美術館館長を務めている。

講演では、美術館の在り方や学芸員の役割について話があり、日本の美術館が鑑賞者のことを考えていないことに問題があると言われ、何よりも美術館に子どもの姿が少ないことを問題視していた。美術館を取り巻く社会、地域への配慮、商店街、宿泊施設、学校、子ども、交通等全ての関係するものに対応した企画が重要であると持論を展開していた。

蓑氏の話が一区切りついたところで、村上氏が蓑氏がゆとり世代を作った張本人世代ということで、今の若者世代、それもアートに関わる者の意識の低さの原因があるかのように批判していた。村上氏は、日本で10本の指に入る現代美術作家だが、特に現代の若者世代や教育機関についての言動が印象的であった。

村上氏は自ら作品制作を行なうかたわら、会社を経営して若いアーティストを雇って活発な活動を展開しているが、そこでの経験として特に組織について話された。大学では個人のことばかりで組織については教えない。作家志望者は絵が描けて当たり前であり、組織を会社と捉えて売り出していかなければ評価されない状況がある。時間の使い方。金銭感覚等身につけることが必要であるが、それも大学では教えないということを言っていた。

大学人としては頭の痛い話である。そして、グローバル社会に打って出るには、最低英語を含め4カ国語を話す必要があること、若者は組織の中で歯車の一つとして機能することに我慢が足りないとも言っていた。

村上氏は自分が行っていることはマネジメントと言い切っており、言語、習慣等が違う海外でどのように作品を売り出すのかと言えば、ネゴシエーション能力も重要であり、言いたいことは、絵だけ描いていれば済む時代でなく、それを社会に認めさせるのは多くの要素が必要であること、それを身につけることで、作家でなくとも一流会社のスタッフとして芸術に関わっている者も多くいる現状があり、そのような人も含めてアーティストが活躍する環境が出来上がっているということであった。

お二人の話は美術分野に限らず音楽や舞台芸術すべてに通じることであり、文化施設の在り方、教育機関それも芸術教育機関におけるキャリア教育の必要性を述べており、我々芸術教育並びに文化施設にたずさわる者にとって、示唆に富む内容であったと考えている。

現在まで、芸術に関わる者の意識として、アーティストや施設管理者の視点での事業運営がなされてきたが、あらためて鑑賞者や利用者の視点で事業を遂行することの重要性を述べて頂いたものと理解している。