7月号 初めての防災コンサート「避難訓練コンサート」実施
2011年3月11日の東日本大震災は、地震とそれに伴って発生した津波により大きな被害を受けたが、文化施設も被災し災害発生直後は住民の避難所となった。多くの人が集まる文化施設では、今回の震災が起こる前から災害時の避難について、問題意識を持ち防災訓練を実施してきた。しかし、公共施設・ホールでおこなわれる通常の防災訓練の多くは火災を想定したものが殆どであった。
東日本大震災後、文化施設において事業実施時における避難訓練が必要とされ、ホールで避難訓練コンサートが実施されるようになってきたが、実施例が少なく内容としては地震や火災が起きたことを想定し観客を避難させるものである。
公共施設においては、自治体の消防音楽隊や施設と関係ある演奏団体に演奏協力をお願いし実施している。これは、コンサートとなると途中で演奏を中断することは考えられず、そのような条件で演奏をお願いする団体が限られるからである。
武豊町民会館(ゆめたろうプラザ)が実施する防災コンサート「避難訓練コンサート」は、不特定多数の人間が集まる公共ホールにおいて、危機管理と安全対策が重要であり、通常の防災訓練、避難訓練とは別に、公演中に地震による災害が発生したときの対応として、観客が混乱することなく避難が出来るよう訓練することを目的としている。
全館施設を対象とした実施が望ましいが、今回は収容人数が多く避難に混乱が予想される大ホール(輝きホール)を中心に実施することとし、実際に公演を実施して公演の中で危機管理、安全対策意識を高めるとともに、避難経路が適切であることを確認する内容となっている。
今回は震度6の地震を想定し、町民に参加を呼びかけて演奏中の避難訓練を実施するものであり、職員やフロントスタッフのマニュアル作りから始まり、事前講習、実施、評価、そして改善を行うこととなる。
舞台芸術等の鑑賞事業を多く実施する施設の特徴として、鑑賞者は不特定多数の利用者で、公演中の客席は暗い空間であり、事業の内容によって誘導灯が消灯されることもある。通常の防災訓練と異なる環境で困難が予想され、加えて舞台上には照明等の吊り器具、舞台は床設備があり、仮設物があればさらに複雑な要素が加わることになる。
初めての取り組みとなる今回は、観客として入場していただいた鑑賞者の皆様のご協力を得ながら、本館のフロントスタッフが入場者を安全に誘導、避難させることを目的に実施する。当然、実際に展開することで多くの課題が明らかになると考えられるが、防災訓練は今後も継続して実施する予定であり、アンケートを集計した結果をまとめ、会館関係者が情報共有し安全な施設を実現するよう努力したい。