8月号 芸術鑑賞の変遷
たいへん古い話であるが、芸術に関わる実演団体は2月や8月に公演が少なく、年間を通じて平均化した活動ができず仕方なく長期休暇を設定することが多かった。最近では、ポップス系ジャンルで野外コンサートが当たり前となり、美術分野でも現代美術が屋外展示鑑賞が可能になり、多くの公演や展示が場所にこだわらず実演や展覧会が行なわれ、季節による繁忙期が感じられなくなっている。
近年は社会全体に季節感が薄れ食文化にも影響が出て、技術革新により自然を感じる感性にも影響が出ているが、暑さだけは以前より強く感じられて不順な天候も多く、災害が多発している印象がある。
そのような中で、今月は珍しい「古楽器による演奏会」と名古屋随一のラグジュアリーホテルでの展覧会「アートナゴヤ2012」を鑑賞してきた。それから「全国高等学校総合文化祭」が富山県で開催され、開会式に出席をした。
古楽器演奏は、ルネサンス時代の復元楽器を用いたモンテヴェルディーの「聖母マリアの晩課」が演奏された。名古屋でこの曲が古楽器を使用して行なわれることは初めてで、当時の復元楽器と声楽による演奏は貴重な公演であった。
声楽中心のルネサンス時代は楽器が声楽を支える役割となっているが、現代では廃れてしまったオリジナル楽器による作品演奏が欧米で一般的になっている、日本においても音楽芸術の成熟とともに増えていくと思われる。
「アートナゴヤ2012」はホテルの1フロアー27室をギャラリーとして、名古屋を含め東京や海外の画廊からの出展作品を展示したイベントである。一度に多くの作品を鑑賞することができ、大変豪華で贅沢な雰囲気を味わうことができた。ホテルの一室という狭い空間を、室内に止まらずバスや洗面所までも展示スペースとして利用し、意外性を感じると同時に主催者の作品展示に対する創造性を感じることが出来た。展示場所を問わないインスタレーションが新たな空間の創出に発展するよう期待している。
全国高等学校総合文化祭は、毎年日本全国から高校生が開催県に集結し、吹奏楽、器楽・管弦楽、日本音楽、吟詠剣詩舞、郷土芸能、マーチングバンド・バトントワリング、美術・工芸、写真等などの文化関係クラブが日頃の成果を発表する高校生の文化の祭典である。
全国から集まった次世代を担う高校生が参加・交流するもので、何かと脚光を浴びるスポーツ系クラブに比べ地味な存在であるが、地域文化の継承を若い高校生が積極的に担っている姿勢は感動に値する。文化や歴史に培われた多くの芸術が、若い世代の新しい感性で披露されることも魅力の一つであり、何よりも若者の交流の成果が期待される祭典である。