2014年 8月号 札幌国際芸術祭2014
今年の夏も昨年に引き続き猛暑が続く名古屋の暑さを避け、8月2日から1週間を札幌で過ごした。第59回となる「全日本吹奏楽コンクール北海道予選」札幌地区大会が、札幌コンサートホールキタラで行われ審査員を務めるためである。
ホテルから中島公園内にある会場に向かう道には、小川が流れ紫陽花が咲き本州との季節の違いが感じられた。ホール入口正面には白い大理石の彫刻が置かれ、ホールホワイエとメインエントランスにも同様な素材による少し小さい彫刻が置かれ、3つ合わせて一つの作品として存在感を出している。作品は国際的に活躍している北海道出身の彫刻家、安田侃氏の作品である。
文化施設の多くはエントランスに何らかの美術作品を設置しているが、キタラの作品は素材が大理石のため周りの風景と一体感があり印象的であった。
さて、今年の札幌は初の国際的なアートフェスティバルとして「札幌国際芸術祭2014」が開催されていた。世界的に著名な坂本龍一氏をゲストディレクターに迎え「都市と自然」をテーマに7月19日から72日間にわたり開催され、現代アートを中心に、音楽、パフォーミング・アーツ、メディア・アートなど、各種プログラムを実施するものである。
審査がなかった日に、北海道立近代美術館とモエレ沼公園を訪れ札幌国際芸術祭の一部を鑑賞することができた。札幌は1990年からPMF(Pacific Music Festival)を開催し、世界の若手音楽家を育成する教育プログラムで、札幌市内を中心に公演が行われ定着しているが、今年初めて開催される国際芸術祭も継続・発展することを願っている。
北海道と言えば、先月末に今年度名古屋芸術大学特別客員教授の川俣正氏と食事をする機会があった。北海道三笠市出身で現在はフランス在住でフランス国立高等美術学校教授を努めており、毎年この時期に日本に帰国し活動しているとのことである。川俣氏は越後妻有アートトリエンナーレや、横浜アートトリエンナーレの総合ディレクターを努められているが、作品は大量の木材で既存の建物を囲い込むインスタレーションで、アートと社会の接点を探る試みを行うものである。
最近ではワーク・イン・プログレス(公的組織や地方自治体にインスタレーション制作のプロポーザルを提案し、完成までのプロセスを作品とする。)という手法により世界的に評価の高い美術家である。当日は翌日発行される著書「川俣正・東京インプログレスー隅田川からの眺めドキュメント」を頂き、あらためて川俣正氏の最近の活動を理解することができたが、残念ながら私は所用があり特別講義を拝聴することができなかった。
当日は「川俣の仕事=作品KAWAMATA WORKS」「通路ラボWALKWAY-LABO」について、菊池拓児氏(クリエイター、コールマイン研究室室長)、鈴木雄介氏(建築家)、山口祥平氏(首都大学東京助教)の3人をゲストスピーカーに迎えて行われ、組織的に行われるインスタレーション制作について、学生にとって興味深い内容が展開されたようである。