2015年 9月号 台風に備える
武豊町は、JR武豊線と武豊港により発展してきた歴史があり、ゆめたろうプラザのホール正面横に武豊港をイメージした池が設置してある。数年前の大雨で池の水が溢れ出てロビーの一部に水が漏れ出たことがある。その後、雨樋等を修理し多量の雨が降っても水が溢れ出ることはなくなった。
今年は台風の発生ペースが早く9日に台風18号が午前10時過ぎ知多半島に上陸した。雨台風のため、池の水が心配されたが幸いにも被害はなかった。しかし、1日おいて関東地方で大雨が降り、大変大きな被害がでるような予測できないことが起きている。
文化施設では毎年消防訓練を実施するが、東北地方太平洋沖地震以降、避難訓練を行う施設が多く、訓練はコンサートと一体となった公演の中で実施され、訓練を重ねることにより観客の意識が向上し、スムースな避難が行われるようになっている。
私が演奏活動をしていた三十数年前に台風で公演が中止となった経験がある。当時は携帯電話もなく通信手段が限られる中、演奏者はとりあえず公演会場に集合したものである。公演中止の判断は主催者が行うもので、あらゆる状況を勘案して出される結論を会場で待つことになるが、その時は暴雨風で観客がホールに来ることが困難とされ、中止になったと記憶している。
舞台芸術に従事する実演家は、公共交通機関が不通になってもあらゆる手段を使い会場に到着することが求められ、皆そのような意識を持っていた。したがって、多くの観客が会場に来ることが出来ず、公演不可能な状況になることで中止となることはあっても、実演家が集まらず中止となることは考えられない。
現在でも、実演家は何があっても時間厳守であり、守れなければ自分自身の全ての信用を失うことになる。最近は音響機材の発達や、鑑賞方法の多様化からポップス系の公演が野外で行われるようになっている。野外公演の場合は多少の悪天候であっても公演を強行することもあり、屋内ホールと異なり観客は天候による中止覚悟でチケットを購入しているため、大きな混乱はないと思われる。
予定していた公演が中止となった場合、実演家、主催者そして観客の三者の立場があるが、重要なのは観客に公演中止の伝達をどうするかということであり、中止後の延期、別日程への振替え、料金の払い戻し等について明らかにして対応する必要がある。
なかでも一番優先することは、観客の立場に配慮した取り組みであり、飛躍的に発展した情報伝達手段を駆使し、明確なメッセージを発信することで、大きな混乱を避けることである。