2016年 1月号 名フィルニューイヤーファミリーコンサート
今月は名古屋フィルハーモニー交響楽団(名フィル)の「2016ニューイヤーファミリーコンサート」が実施された。本館での演奏は久しぶりであるが、2016年に「あいちトリエンナーレ」が開催されることから「あいちアートプログラム」として名古屋フィルハーモニー交響楽団による演奏会とワークショップが実施された。
1週間前の楽器別ワークショップに参加した小中学生のアンケートによれば、普段の練習における疑問が解け勉強となった、という意見が多くあった。ワークショップの最後の1時間は全員合奏が実施され、演奏会の合同演奏に出演するメンバーを発表して終了した。
私自身1972年から1989年まで名フィルにトランペット奏者として在籍した。入団当時は名古屋市民会館が全国一の規模を誇る文化施設として開館し、そこに事務所を構え市民会館を主な公演会場として活動を始めた時期である。
演奏会の内容は定期演奏会、依頼演奏会、そして小中学校での音楽鑑賞教室であり、ワークショップ(芸術分野で芸術家が若手の指導にあたる学びの場)や、アウトリーチ(芸術家を地域の学校や施設に派遣して行う支援)等の活動は無く、楽団員が聴衆に積極的に働きかける状況ではなかった。
これらの活動は、将来の芸術家や鑑賞者を育て、芸術文化を支える底辺拡大に大きな効果が期待できることから、現在では当たり前となり実演団体が積極的に取り組むようになっている。本館は、毎年オーケストラ・アンサンブル金沢(O・E・K)の公演を実施し、その際に団員によるワークショップやアウトリーチ、公演前のロビーコンサートを行ってきた。名フィルとは会館オープンや武豊春の音楽祭での演奏会が行われてきたが、予算的な条件と本館の輝きホールの座席が678席で、舞台もフルオーケストラにとって窮屈であることで、回数としてはO・E・Kより少ない演奏実績となっている。
年に1度は質の高い芸術的な鑑賞公演を住民に提供したいと考えているが、予算面から毎年の実施は困難である。今回の公演は愛知県の支援もあり入場料金を低く抑えることでほぼ満席の中での開催となった。
終演後のアンケートでは、オーケストラを初めて鑑賞する方が多く、子どもが入場できるアットホームな雰囲気で楽しめた。指揮者の説明が好評でクラシック音楽が身近に感じられたという記述が多く見られた。
いわゆるクラシック音楽を演奏するオーケストラは、西洋音楽の保存継承団体と見られ一部の保守的聴衆に支えられ、日本全国のオーケストラで長期低落が続いている。新たな聴衆を取り込む運営は、レパートリーを広げ、他の芸術分野との共演などを企画して実現することだろうと考えられるが、今回のような公演がクラシック音楽の普及に大きな効果があると実感できる内容であった。