2017年 6月号 公立文化施設の現状~愛知県~
名古屋市民会館は昭和47(1972)年10月1日に開館し、平成19(2007)年よりネーミングライツを導入し今年45周年を迎える。昨年から名古屋市文化振興室の業務委託を受けた事務所の依頼で「名古屋市の拠点文化施設について考えよう~名古屋市大・中規模ホールに必要な機能に関する調査~」について、懇談会形式で意見を述べる機会があった。
今月は、名古屋市民会館開設45周年記念事業の記念誌製作に関わるインタヴューを坂井誠治館長から受けた。私自身1972年に名古屋市民会館が開館した翌年、名古屋フィルハーモニー交響楽団に入団し、名古屋市民会館を演奏活動の場としてきた。演奏団体や演奏家とホールの関係は重要で、欧米では実演団体があってその活動のためのホールが建設されてきた歴史がある。そのようなことから名フィルは市民会館に育てられたといっても良いだろう。
名古屋市で1,000席を超えるホールは、厚生年金会館(1992年閉館)、愛知県勤労会館(2010年閉館)が閉鎖され、大・中規模ホールは名古屋市公会堂、名古屋市民会館(大・中ホール)、愛知県芸術文化センター、名古屋国際会議場となり、多くの芸術団体が会場確保に苦労している。
愛知県内の公共ホールの多くは1970年代に建設され、いずれも1,000席を超え、名古屋市民会館と同様建設から40数年経過し、改修を行ったがいずれも事業の開催スタイルの変更やアクセスの問題もあり、稼働に苦慮しているようである。
民間施設では中日ビル(中日劇場)が開館51年を経て2019年度末で閉館し、新たな施設に劇場を設置しないことが決まっている。御園座は平成25(2013)年3月に閉館し、2018年4月に新たに開館するが席数が22%減少することになっている。
そのなかで、名古屋市の近隣自治体で文化振興推進の取り組みがあった。2010年4月に刈谷市総合文化センター、2015年10月に東海市芸術劇場が新しく開設され、今年4月には小牧市の文化振興を目的とした「(一財)こまき市民文化財団」が設立された。
自治体が文化施設を建設し事業を運営し継続させるには、財政的な担保が必要であるが、刈谷市、東海市、そして小牧市は「2016年度全国1718市区町村の財政力指数ランキング」の上位を占め、国から地方交付税交付金が支給されない不交付団体である。
文化施設の建設や文化・芸術に関わる事業開催のように、行政における住民生活の優先順位が下位の施策については、財政的な余裕がないと実施ができないということである。最近は日常生活において心の豊かさや生活の質の向上を求めて文化芸術に親しむ市民が増え、市民自らが活動できる場の整備を求めることも珍しくなくなっている。
しかし、今後県内に大ホールが建設される可能性は低く、現在愛知県内にある76の大・中・小ホールの中の30の大ホール(1,000席以上)の活用を促進させる取り組みが求められる。