2018年 9月号 演奏会のメンバー交代
2018年度のサロンコンサートは6回の公演を予定し、17日に4回目となる「ハンブルクトリオ」の公演が行われた。トリオは2013年に結成されハンブルクを拠点にドイツ各地で活動し高い評価を受けているアンサンブルである。
2015年6月に初来日、2017年3月に2度目の来日をし今回が3度目となる。来日直前にチェロ奏者が急病となり急遽メンバーを入れ替えたが、素晴らしい演奏で観客を魅了した。演奏曲がピアノ三重奏曲編成の定番であるブラームスやメンデルスゾーンの作品であったため、メンバー入れ替えによるマイナス面を避けられたのではないか。また、アンコールに日本の歌を演奏したことにより、クラシック音楽で最も格調高い編成の演奏に親近感を持っていただいたようである。
演奏会では様々なアクシデントがあるが、病気などで一時的に演奏不可能な場合、ソロの公演では本人に代わって代理の演奏者でコンサートを行うことはなく、可能であれば日程を改めて実施することがある。その場合、チケット購入者への連絡や代替公演の日程、引き続き鑑賞の意思があるかまたはキャンセルするのか、そしてチケット代金の返金など運営側としての対応が大変となる場合がある。
少人数のアンサンブルの場合、メンバーを入れ替えてもソリストの変更でない限り特別な周知が必要なくそのまま公演が実施されている。大編成のオーケストラやオペラでは、指揮者やソリストの交代があっても、変更案内だけで公演が実施されているが、観客の中にはチケットのキャンセルを申し込まれる方も若干いるようである。
私の経験の中で、オーケストラ団員時代にメンバーが病気等で急に演奏できなくなり、代わりに演奏に従事したことは少なくない。その中で12年前に経験した代役があるので紹介したい。
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン熱狂の日2006」で、海外の友人からエキストラを依頼されたことがある。日本で第2回目となる音楽祭はテーマが「モーツアルトと仲間たち」で、イギリス人の友人はドイツの「ベルリン古楽アカデミー」の一員として来日する予定であったが、急病で来日できず私にエキストラを依頼してきた。
理由は演奏するモーツアルトのレクイエムが古楽器オーケストラによって演奏されるため、当時日本では古楽器のトランペットを所持し演奏できる奏者が限られたため連絡があった。
最初の練習に参加したところ、ピッチがバロックピッチのA=415ヘルツではなく、古典派ピッチのA=430ヘルツで若干調整に苦労した覚えがある。次の日ゲネプロ、本番に参加する寸前で、この音楽祭ではモーツアルトのレクイエムを現在のピッチで演奏する団体(スイスのシンフォニア・ヴァルソヴィア)のトランペット奏者が古楽器を演奏できることがわかり、交代することになり、急遽私の出番はなくなり観客として鑑賞させていただいた。