― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

ゆめたろうプラザ

2020年 3月号 「名古屋駅前モニュメント」

今月になっても新型コロナウイルス感染拡大による事業への影響が止まらない。文化施設にとってしばらく事業の中止が続くことが予想されているが、あらためて利用者の途絶えたゆめたろうプラザを見て開館当時のことが思い出される。

武豊町民会館は平成16(2004)年9月に武豊町の文化・芸術の拠点として作られ、当時としては全国でも珍しい行政とNPO法人が協働で運営する施設として誕生した。同年12月に中部建築賞の一般部門に入選し、平成25(2013)年には地域創造大賞(総務大臣賞)を受賞している。

開館と同時に注目された施設であり、設計は(株)都市造形研究所、実際は代表取締役の伊井 伸氏で基本構想から工事完成後業務まで統括し、会館運営についても大きな役割を果たしていただいた。

リニア中央新幹線について整備計画が進められ、2027年品川駅と名古屋駅間の開通に向けて名古屋駅周辺の再開発が進められている。数年前から名古屋駅東口前にある円錐形モニュメント「飛翔」の移設、保存が話題となっている。

実はこのモニュメントは、武豊町民会館の設計者である伊井 伸氏の製作によるということを知っている方は少ないのではないか。「飛翔」は名古屋市制100周年にあたる平成元(1989)年の世界デザイン博覧会の開催に伴い、名古屋駅前ロータリー交差点整備の一環として、昭和62(1987)年に公開設計競技により選定されたものである。

長年にわたって名古屋駅前のシンボル的な存在であったが、リニア中央新幹線の開業に向けて名古屋駅前ロータリーの再整備が進み、最近では巨大なモニュメントをどう扱うかが課題になっていた。

平成27(2015)年11月の名古屋市議会本会議の一般質問で、河村市長は2年をめどに飛翔を移設する見通しであることを明らかにし、その後2018年度に飛翔撤去後の広場整備の方針を固め、令和2(2020)年3月6日河村市長が飛翔の移転先をささしまライブの名古屋高速道路高架下で調整していることを明らかにした。

ステンレス管を溶接した構造のためそのまま移設することが困難であり、今年度から解体を始めて令和3(2021)年から再び組み立てることになるようである。

本日、中日新聞に名駅の「飛翔」設計者伊井 伸(いい・しん)氏3月1日死去の記事が載っていた。しばらくお会いしていなかったが、飛翔の移転先を確認することなく急逝されたことが残念である。