2020年 7月号 「現代美術と組織運営」
先月6月14日に名古屋芸術大学で前森美術館館長の南條史生氏による講演があった。「現代美術の将来」というテーマで教職員を対象にSD研修(大学等の管理組織が教育・研究支援に関わる資質向上のために実施する研修)の一環として実施された。南條氏は昨年まで森美術館の館長を13年間に渡って務められ、美術館運営について幅広い知見を持っており、そのことを通じて大学の管理運営組織に必要な取り組みを学ぶ目的で行われた。
南條氏は一時名古屋に通っており、今でもプロフィールに「ICAナゴヤ・ディレクター」と記載している。1986年に繊維関連工場の建物を改装した現代美術の展示スペースで、南條史生氏が逢坂恵理子氏(横浜美術館長を経て現在国立新美術館館長)とともにスタッフとして企画に関わっていたようである。1992年に資金上の理由により閉鎖されたが、ヨーロッパの巨匠たちを紹介し、日本のアートシーンに影響を与えたことが記録されている。
一時現代美術は名古屋といわれた時代があったようであるが、当時の状況について、文筆家の大野左紀子氏が80年代の名古屋に「アートシーン」はあったのかで記述している。
1966年に愛知県立芸術大学が誕生し、翌年には名古屋造形短期大学が開校し、後に4年制の名古屋造形大学となる。1970年には名古屋芸術大学が開設する。画廊は、桜画廊(今はない)が74年に唯一の貸し画廊から現代絵画、彫刻を扱う企画画廊となった後に、若い作家の実験の場としての性格をもったスペースや画廊が幾つかオープンする。
さて、当日の講演に戻るが、ポストコロナの時代で展覧会ビジネスはどうなるのかということについて、持論を話していただいた。今までの興行的に大きな成功を収めることができる多人数の展覧会は、人数を制限して申込制が取り入れられ、鑑賞にかける滞在時間が制限される。不特定多数の来場者は選別メンバー制になるだろう。
実際の鑑賞においては、個人主義的鑑賞態度から体験感動重視型鑑賞、接触性から非接触性、そして自由鑑賞からガイド付き鑑賞が取り入れられるのではないか。経営的には量の経済から質の価値が重視されるようになり、薄利多売から高額チケットの販売や、多数のスポンサーの必要性が求められることになる。
本来のリアルな体験もヴァーチャル体験が取り入れられ、シンプルで多層的なビジネスモデルに変化していくことが予想されるとしている。