2020年 9月号 「政府によるイベント人数規制の制限緩和」
新型コロナ感染症の収束が見えない中、徐々に芸術文化活動の再開に向けた取り組みが行われている。9日に公益財団法人山田音楽財団主催の新進指揮者コンサートに出演する指揮者選考会があり審査員として出席した。
会場はしらかわホールで、客席は関係者のみで約20人であった。しらかわホールでは舞台上の人数制限を設けており、最大40人と聞いていたが、当日は指揮選考の課題曲がベートーベンの交響曲第3番となっており、セントラル愛知交響楽団55人の楽団員が演奏に従事した。
55人編成のオーケストラが実現したことについて、楽団関係者に聞いたところ感染予防対策ガイドラインに沿って舞台上の楽団員配置図をホール管理者に提出し理解を得たそうである。演奏者は舞台上で弦楽器奏者はマスクを着用し、譜面台が1人1台で配置され、管楽器奏者の前には透明の衝立が置かれていた。指揮者の周りには楽団員に飛沫が飛ばないよう衝立が設けられた。特に音響的に違和感を覚えることもなく選考会を終ることができた。
政府の通知では、9月末まで屋内イベントでは、基本的に収容定員の50%以下とされており、現時点ではその方向で事業が開催されている。14日に政府発表があり19日からのイベント人数制限が緩和され、収容率要件について感染リスクの少ないイベント(クラシック音楽等)については、100%が11月末まで実施されることになった。
これにより中止あるいは延期していた事業がすぐに従来のように実施できるかといえば、すぐに回復することは困難と思われる。鑑賞者の中には感染のリスクを恐れて来場を躊躇する方が一定数おり、感染リスクの少ないイベントとされた音楽、演劇等、舞踊、伝統芸能、芸能・演芸、公演・式典、展示会などにおいて、あらためて感染をしない取り組みをするため、従来とは違う形態で実演内容の再構成が必要になるかも知れない。
この館長だよりを執筆中に、本館NPO法人の高橋事務局長が近隣の文化施設のイベント人数制限緩和についての対応を知らせてくれた。それによると人数制限緩和が11月までということで、いつ規制緩和が覆るかわからない状況では、今まで通りの対応を踏襲する施設が殆どである。席が自由席であれば状況に応じて対応できるが、指定席であれば状況の変化に対応することに困難が伴うことも指摘されている。
そして、席数を変更することに伴う席の準備に多くの時間を費やすことから、容易に変更できない実態が浮き彫りになっている。公演によっては高齢者が多く、50%制限を設けることで安心して来場しているようである。いままでに主催公演をいくつか実施した施設では、開演前、終演後、休息中の館内、ホワイエ、トイレ等での密を避けることが困難であることが分かった、という意見が多く寄せられた。
人数制限緩和が通知されたが今年度中は従来の50%を踏襲する状況となっている。