2022年 9月号 「オーケストラの歴史Ⅵ」
オーケストラを楽しむ方が演奏会に足を運ぶのは、指揮者や独奏者、そしてプログラムによるところが大きいと認識している。定期会員などはオーケストラを支持しているため、どのような内容でも足を運んでいただいているようである。
オーケストラは、バロック時代(16世紀末から17世紀初頭)に20数名で編成され、以後楽器の発展もあり、編成が大きくなり20世紀以降100人を超える編成となった。そのため、多様な作品が生まれ、貴族階級から一般大衆に聴衆が拡大し社会に鑑賞機会が広がった。
オーケストラ音楽を愛好する聴衆は、古い時代の小編成の楽曲を好む人と、近代の大編成を好む人に分けられる。長年オーケストラ音楽に接してきた聴衆は、構成がシンプルな楽曲や小編成のアンサンブル好む傾向がある。一方で大編成の華やかな楽曲は、年齢や鑑賞年限を問わず多くの人が好む傾向がある。
演奏するオーケストラ曲は「絶対音楽」と「標題音楽」という分類がされることがあるが、絶対音楽は音楽そのものを表現し、歌詞を持たず物語や絵画、文学など他の芸術と結びつかない曲で、バロック時代から古典派時代の作品のほとんどが当てはまる。
標題音楽は、情景や風景などを描写した曲で、ロマン派(19世紀)以降に多くの作品が生み出され、誰にでも聴きやすく分かりやすいので、コンサートで取り上げる機会が増加している。
オーケストラの演奏曲の中で、交響曲や協奏曲は絶対音楽で、オペラやバレエなどは標題音楽である。オーケストラ団員にとって、オペラ音楽はテンポと音量に注意すればよく、バレエはテンポだけで音量は気にしなくて良いので、比較的演奏は楽である。絶対音楽に分類される交響曲は、曲の内容について指揮者の意向と自身の考えをすり合わせる必要があり、練習に時間がかかる場合が多い。
オーケストラの練習時間は、自主公演の重要な定期演奏会や特別演奏会は、公演前の2日から3日を練習に充てる場合が多く、依頼公演については1日の練習で本番を行う場合がほとんどである。
音楽鑑賞教室や演奏回数が多い曲で編成される公演は、当日のG.P(ゲネラル・プロ―べ本番前の全員練習)のみで公演を行うこともある。日本のプロオーケストラの1日の練習時間(日本音楽家ユニオンオーケストラ協議会実態一覧から)は、読売交響楽団が1番短く4時間15分、東京都交響楽団が5時間、ほとんどのオーケストラは6時間程度となっている。
名古屋フィルハーモニー交響楽団は6時間であったが、最近は1時から5時までの5時間で食事休憩を取る必要のない時間帯で行っている。