― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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2023年 5月号 「アウトリーチの意義」

今では一般的になった「アウトリーチ」であるが、コロナ禍で中止した年もあったが、今年は武豊町内の小学校4校で4年生を対象に11回の公演が行われた。出演者はバイオリニストの礒絵里子さんとピアニストの中川賢一さんである。

二人とも(一財)地域創造公共ホール活性化支援事業アーティストとして、全国各地で演奏活動を行っており、演奏だけでなく楽器の仕組みの説明や、曲の解説を織り交ぜた公演は鑑賞した生徒にとって大きな刺激になった。

最近は、学校教育で人工知能の導入が進み、様々なものがデジタル化され、アナログで考えることが少なくなっている印象がある。芸術系の授業も削減され、家庭や地域でしか文化芸術に触れる機会が無くなっている。

子供の心身の発達において感性が重要で、生の音楽に接する事はとても良い経験になると考えている。このような機会は自分から演奏会場に出かけて鑑賞するしか方法はなく、小学生にとっては保護者の付き添いが求められるので機会は限られる。

アウトリーチは手を伸ばすという意味であるが、オーケストラや合唱団が将来の観客を増やす目的で移動音楽教室として始められた。そして、ソロやアンサンブルは演奏の場を求めて実施されてきた。

1990年代になり(一財)地域創造がクラシック音楽を地域に届ける事業として、オーディションにより選考した演奏家を地域のニーズにこたえる形で派遣実施してきた。また、ホールの活性化に寄与するということでアウトリーチも行われるようになっている。

結果としてクラシック音楽の演奏会入場者が期待するほど増加していない。地域ホールの公演事業が増加したかと言えば大きな改善が見られない。唯一アウトリーチ事業だけをしている印象がある。

文化庁による、オーケストラや一流文化芸術団体による巡回公演が、被災地や障害者施設を含め子ども育成推進事業として実施されている。コロナ禍によって公演の機会が少なくなったことにより回数が増加している。

武豊町では町内の4小学校の4年生全員にアウトリーチを実施しているが、近隣の市町村でこのような取り組みをしているところはなく、自治体の規模と実施をサポートするNPOたけとよの存在が大きく影響している。

多くの自治体で取組んでいるアウトリーチであるがまだまだ実施が少ない状況にある。そこでは、若手演奏家を起用し実施機会を多くする必要がある。若手演奏家に実演の機会を提供することは、将来の演奏活動に資するため、全国のホールや関連施設の積極的な取り組みが求められる。

以前から言われるように、若手演奏家は100回の練習より1回の本番が将来の演奏活動に効果的と言われているので、そのような機会を設けることが望まれる。