2024年 1月号 「サロンコンサートの役割」
竹本義明
今年度も次年度の「サロンコンサート」の売り出しが始まった。長年にわたり実施してきた「サロンコンサート」は、観客にアットホームな雰囲気で、気軽にクラシックの生演奏が聴けること、ハイクオリティーな演奏と贅沢な時間を届けることを目的に開催されている。
2009年頃から開催され、今では町民に定着した事業となっている。当初は、町民会館の発足まもなくで、事業企画運営への対応に経験が浅く、地域町民の文化芸術事業への意識を把握することが不十分な中で行われた。
企画は、近隣の中小規模文化ホールとの共同企画で実施されてきた。公演を複数館で実施することで、1回ごとの出演費用を低く抑えることができ、事業予算が限られる本館としては、多くの公演が開催できるメリットがあった。
一方で、演奏を行う若手演奏家としては、公演の機会が複数回行われることで、自身の演奏経験の向上や経歴にプラスになり、積極的に演奏に参加する姿勢が感じられる場面が多く感じられた。
武豊町民会館では、年間事業における自主公演の大きな柱となっており、すでに社会的評価が出ている若手出演者に加え、評価が高まりつつある中堅演奏家の活躍の場の提供など、双方にメリットがある開催になっている。
回数を重ねる中で、クオリティーの高い出演者の公演が多くなり、最近では観客の満足度が上がっていると感じている。また、プログラムや楽器編成なども通常とは異なり、担当者からの企画が概ね好評で公演の継続が可能となっている。
サロンコンサート出演者は、今後の活動に期待ができる方ばかりで、数年たってその活躍を知ることも大きな楽しみとなっている。その意味で、鑑賞することで一時期活動を支えたという満足感を得ることができている。
近隣の複数の会館と協力して実施してきたサロンコンサートが定着し、年間事業の柱になっている現在、事業予算の縮小のために余儀なくされた、ソロや小編成のアンサンブルの実施であったが、ホールの席数や視覚的要素から合致した事業として定着している。
従来からオーケストラはシューボックス型のコンサートで発足したものが、アリーナ型ホールの出現により演奏場所が大型化し、視覚的には良くなったが音響は議論がある。オペラやバレエは上方に席が積み重なるオペラ劇場で発達し上演されたものが、多目的ホールの上演で、視覚的に不満を抱えることになる。
合わせて上演される舞台公演も、過剰な音響や照明により音響的に視覚的に手ごたえのある舞台が実現できているが、クラシック音楽の公演には本質を見失う結果となっている。
サロンコンサートは、これからも、しっかり情報を集め観客のニーズに応えた事業の展開が望まれる。