2024年 6月号 「名古屋の音楽100年を考える会Ⅱ」
竹本義明
5月号で「名古屋の音楽100年を考える会」の情報を伝えたが、あらためて実演団体の運営を考えると愛知県内で施設の不足が深刻な問題として上がっている。コンサートや各種公演を行っていた1000人を超える収容人数があった愛知厚生年金会館や愛知県勤労会館が閉館したことが影響している。
その後、新しいホール建設が実現されず演奏機会が減少するばかりである。現在1000人を収容できるコンサートホールは、名古屋市内では愛知県芸術劇場コンサートホール、日本特殊陶業市民会館、名古屋市公会堂だけである。
名古屋市近郊では、豊田市コンサートホールや刈谷市総合文化センター、東海市芸術劇場等が利用されている。今後、日本特殊陶業市民会館の建替えが予定され、さらに利用ホールの逼迫が予想されている。その様な状況でいかに公演を維持し、音楽文化を発展させるかが大きな問題となっている。
当面の解決策して、名古屋市近郊の既存施設を利用した鑑賞が望まれる。この地域には昭和40年代に建設された市民会館が数多く残っており、まだまだ利用価値があると考えている。名古屋市中心部にある条件の整った施設ホールで鑑賞することも一つであるが、オーケストラ公演を実現する席数を擁する会場がすぐに開設されることはなく、現状の条件の中で既存施設の利用を考える必要がある。
そもそもオーケストラによる音楽鑑賞は、ドイツやオーストリアで発達してきた。それはオーケストラ王国と言えるドイツで自治体の財政規模に応じて、コンサートホールが建設され、財政に合った編成のオーケストラが組織され、地域で発達してきたことによる。
一方でオペラはバレエと一体となって、舞台芸術を公演するオペラハウスが建設され、社交場として発展してきた。いずれも現在では高齢な世代の人たちに支えられる状況となっている。
若者は、ポップス系を好む傾向があり、大規模のアリーナなどが会場として利用される傾向が大きくなっている。一方で高齢者はクラシック系の音楽を好む傾向があり、それを手軽に楽しめる場があれば、継続して鑑賞する意欲があると考えられる。
いわゆる音響等の条件に目をつぶれば、身近な場所でいくらでもコンサートが実施できると考えている。そして、日常的には大編成から小編成の演奏にも興味を示しており、そのような要望に応える取り組みが必要となっている。
50人から100人程度が収容できる小ホールをリストアップし、演奏家をマッチングさせる取り組みが望まれる。