2013年 11月号 文化講演会
本館と地元企業の共催で行なう恒例の文化講演会が実施された。吉本新喜劇座長として一世を風靡した故・岡八朗の長女で、ゴスペル歌手の市岡裕子さんが「ゴスペルソングに救われて~苦しいときこそ夢と希望と音楽を~」のテーマで講演と演奏を行なった。
通常の文化講演会は、聴衆に向けてテーマにそってお話を展開するが、今回はゴスペルソングが加わり、その間にコメントが入る流れであったため、終始リラックスした雰囲気で毎年の文化講演会とは趣が異なる進行であった。来場者は女性が多く終演後に回収したアンケートの回答では、60歳代の女性を中心に講演の話に自分自身の人生を重ね合わせた感想や、元気をもらった、歌とトークの流れが素晴らしかった、と言う記述が多く見られ概ね支持されたと考えている。
文化講演会は長い間武豊町と企業の共催で実施されてきたが、企業が今回の講演をもって共催が出来なくなる可能性を示唆している。理由としては、企業を取巻く社会情勢が厳しくなり、共催費用が負担できないと言うことである。
企業が社会貢献、地域貢献として地域の文化活動に協力しているが、業績が悪化し商品の値上げを予定する場合、広報予算とともに貢献活動にかかる費用が真っ先に削減される傾向のあることは残念である。
企業等の文化芸術による社会貢献は、時代により様々な変遷を経てきたが、欧米では1990年代後半から企業の社会的責任が問われるようになり、中でも社会貢献活動の一環として文化芸術支援活動が活発になってきた経緯がある。
海外に進出した日本企業は、現地の市民社会の一員として積極的な社会貢献活動が求められ、文化芸術を通じて社会貢献を実施する環境におかれてきた。しかし、日本社会は欧米に比べ市民社会の成熟度が低く、企業や経営者からの文化支援(メセナ活動)により市民が文化芸術を享受するという受身が一般的で、市民社会が企業に対して積極的に社会貢献を求める姿勢が欠如している。
全国各地で行われている文化講演会は、自治体による文化事業の年間行事として実施され、実施する自治体ではゲストの選出に頭を悩ませている。それは、講演会ということで市民の知的要求に応えると同時に、芸能的要素を求める講演に加え、講演者の認知度も集客の大きな要素となっているためである。
前述のように、本館と企業の共催による文化講演会の開催が困難であるなら、文化芸術による社会貢献に意欲を持つ新たな企業を見つけ、特色のある講演会を実施するか、自治体単独で文化講演会を実現することとなるが、あらためて住民の文化講演会に関する評価や要望を伺い、継続して実施したいと願っている。