2013年 6月号 2013ジョイントフェスティバル愛知
地域文化施設の存立意義は、行政が施設を設置し地域の住民がそれを利用するという従来の形から、住民が参加・交流できる企画を提供し、地域住民との交流を積極的に展開することに存立意義を見出す考えが一般的となっている。
今年度、愛知県内の4市町(武豊町・豊川市・長久手市・西尾市)が手を結び、協同して公演が企画され、7月15日の「ウインド~風~(西尾市民文化会館)」から始まり、9月8日「劇団うりんこ~アリス~(ハートフルホール)」まで、3ヶ月弱の期間に15回の公演を予定している。
単独の文化施設で実施するにはハードルの高い公演を、複数館で計画することにより実施が可能となり、地域文化施設の活性化を図ることができ、結果として地域住民の鑑賞行動を誘発する効果が期待され、地域文化施設の存立意義が理解されると考えている。
愛知県には平成24年時点で全国公立文化施設協会の正会員として48館が登録しているが、事業活動に濃淡があることから、このような取組みが活発になれば、停滞している会館の活性化に有効と考えられる。
現在、公立文化施設が抱える悩みとは、施設の老朽化に伴う修理・修繕予算の確保が不十分であること、自治体財政の悪化による事業運営予算の削減、そして人材の不足である。前述したように、会館が地域で存在感を示すには地に足の付いた事業運営が不可欠であり、いわゆる貸館と自主公演事業のバランスの取れた運営を心がけることが重要である。
この数年行政にとって文化施設に関わりのある文化振興プランの見直しや、新たにプランを策定する取組みが行なわれている。会館の管理・運営が直営か指定管理かにかかわらず、会館の運営の指針と言うべきプランが策定されたことによる効果が認められる。過去に各種助成金の対象となる事業が2~3館連携して実施される例があったが、それは、同一の公演を複数館で実施するものであった。
今回のジョイントフェスティバルは、地元の劇団と会館の担当者が一同に介し、海外招聘公演を含め5演目の実施を計画したものである。いずれの会館にとっても初めての試みであり、実際に公演を予定する中で補助金申請のことが問題となった。4市町の中で1市町が代表して申請し、公演実施後の補助金支給まで対応するため、負担が偏ることから補助金申請が叶わなかった。
文化施設の連携は望まれているが、実際に実行する中で施設ごとの管理・運営形態、予算規模、地域環境の違いが連携を妨げる要素となり、あらためて複数館による連携事業実施の困難さが明らかになった。今後、地域活性化を目的とした文化振興を実現するには、各市町の文化振興担当部署による協議体を発足させ、連携を深め補助金が獲得できることを望んでいる。