2013年 3月号 音楽祭の成果と課題
知多半島春の音楽祭が各地で展開されているが、3月になり寒暖の差があるものの、知多半島は花便りも聞かれるようになり、確実に春が近づいているような気候となっている。その中で、音楽祭も終盤となり3月の週末は各地で10回を超える公演が開かれているが、心配された運営も手馴れてスムースに実施されている。
音楽祭の成果と課題を論ずることは早いと思われるが、中間報告的に意見を述べるとすれば、特に大きな問題もなく実施され、鑑賞者から予想を上回る評価を頂いている。
さて、芸術が社会的に成立する要素として、最近では当たり前のこととして捉えられていることがある、「創造」「享受」「教育」、そして「分配」であるが、今回の知多半島春の音楽祭で一番危惧された「分配」マネジメントが予想以上に成果をあげている。
従来から「創造者」は演奏に集中するあまり運営は人任せであり、享受者である観客の評価や芸術教育の社会的貢献について関心が薄く、演奏家の意識のあり方がが問題となっていたが、今回は創造者が自らの公演を主体的に運営する姿勢が見られたことが成果である。
また、以前から実演家が抱いていた「文化ホールが演奏者を育てて欲しい」という要望に対し、各市町の会場がその役割を果たしたことも成果と考えている。演奏者にとっての課題として、演奏者自身が情報発信を行なう必要性が高まっていること。演奏者のプレゼンテーション能力が求められること。そして、演奏活動に高いレベルを追求する姿勢を持ち続けること、が明らかになったことである。
行政に求める課題として、今回の音楽祭の実施について、計画段階から各市町行政の支援が不十分であったことがあげられるが、運営委員会、実行委員会そして演奏者の力量不足により行政の重い腰を動かすことが出来なかったと捉え、音楽祭に関わる全ての方の組織を充実させ活動することが課題となったことである。今月中旬に、今回で3回目となるセントラル愛知交響楽団を支援するミニコンサート・交流会が、同団の理事を務めている中埜総合印刷株式会社社長の中埜宏泰氏の邸宅サロンで行なわれた。愛知県を中心に活躍するセントラル愛知交響楽団が、知多半島に活躍の範囲を広げるため、クラシック音楽の講座を開催し、オーケストラ公演の公開リハーサルを計画するなど、着実に取り組みを深められるよう、常滑市在住の同団理事で株式会社マキノ社長の牧野克則さんとともに開催したものである。当日は、榊原純夫半田市長をはじめ半田市行政関係者、半田合唱協会、半田文化協会の役員の方々が参加し、大いに機運が盛り上がった。
このような会が実施されることにより、地域の文化環境が活性化し、今後の知多半島春の音楽祭が充実することが期待できると考えている。