11月号 文化施設の現場から学ぶこと
館長 竹本義明
武豊町民会館(ゆめたろうプラザ)の館長を引き受けてから2年半が過ぎたが、期待通りの職務が遂行できたかは甚だ疑問を感じている。本館は会館建設前から町の第4次総合計画に基づいた「武豊町文化創造プラン」が策定されていたため、初代館長はじめ町職員とNPO職員の協働により、県内でも評価される文化施設の一つと数えられている。私自身、過去に実演家としての立場で文化施設に関わってきたが、実際に現場に勤務して当初考えていた運営と大きく違う認識を持つこととなった。
初めて施設で多くの体験をさせていただいたが、文化施設では事業運営は勿論のこと、施設を維持・管理することに多くの時間と労力を費やすことを理解することができた。予算の支出においてもそのような業務を反映した数字となっている。本館の平成20年度決算から言えば、人件費が28%、一般管理費が12%、そして維持管理費が40%となっている。最も外部から注目される事業費は14%、そして20年度に限り支出された施設整備事業費が6%であった。職員は施設の維持・管理に職務の大半を割かれる結果となっている。いわゆる余裕を持って事業を実施することが極めて困難な状況、ということである。
それに加え劇場・ホールは、舞台機構を備えており、そこでは床機構と吊り物、舞台音響、照明の扱いに専門職員が必要とされ、施設では複数の専門技術者を雇用している。施設が維持・管理されてこそ事業が継続的に展開できると言うことであり、ハードとしての文化施設は、建設されてから5年単位で修理や修繕などの保守管理が必要となり、多くの施設を見ているとさしあたって建設後10年前後までは事業費が維持できるが、施設運営の総予算が増加しないところで、維持・管理費の増加に伴い事業費が圧迫される傾向があり、魅力的な事業の実施が困難となっている。
このような現状で実際に魅力的な事業を実施するとなると、職員が限られた予算内で想像力を高め、良い企画に結びつける作業が求められる。施設管理の占める割合が多い業務時間の中で余裕を持って事業計画を立案し実行するには、町からの出向職員が現場に来てある程度力量が備わった時に異動する、と言うことの制限も必要になるだろう。勿論本人の希望を尊重しなくてはならないことは当たり前であるが、劇場・ホールは20年、30年と生き残ることが出来ても、そこで実施される事業の枠組みは永遠に成功するとは考えられず、数年単位で大きく変えなければ成功は望めないだろう。改めて劇場・ホールの館長は事業運営における大局を読み、方向を定めることが重要な職務であろうと考えている。具体的には、劇場・ホールはアートの専門家で経営的視点を併せ持つ、独立した任期制の館長を置き、事業の活性化及び充実を目指すことが望まれる。