― 芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」武豊町民会館 ―

ゆめたろうプラザ

芸術と科学のハーモニーを奏でる「創造の丘」

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12月号 究極のアートマネジメント

館長 竹本義明

究極のアートマネジメントとは、芸術が経営的に成立するようマネジメントを行うことであろう。しかし、いわゆる芸術分野に関わる実演家やマネジメントを行う事務所では、芸術が何らかの補助金なしでは成立しない、ということを考えの根底に置き事業を進めているようだ。いわゆる娯楽やポピュラー分野の公演が常に採算性を考えて公演することとは大きく異なる。社会的に景気回復が足踏み状態となる中で、公的補助金や民間の助成金が縮小され、益々事業の実施が困難となっている。しかし、このような状況がチャンスと捉えることもできるのではないか。

殆どの公演が単発で実施されているが、複数回実施するだけの鑑賞ニーズが無い、あるいは実施しても採算が取れないということを耳にする。確かに今までの枠組みでの構成では
当然のことだろう。経済学における限界費用を例に考えると、展示を主な鑑賞形態とする美術分野の企画では、1度展示会場を準備できれば、予想以上の入場者が来館しても新たな固定費用の支出が必要とされず、最初の固定費が限界費用となる。しかし、舞台芸術分野の公演では、予測より鑑賞者のニーズが増えて公演回数を増やした場合、会場費や出演料などに新たな支出が必要となり、余計に費用が必要となり限界費用が増えることとなる。

限界費用とは財、サービスを生産するとき、ある生産量からさらに1単位多く生産するのに伴う追加的な費用を言うが、芸術分野の公演では1回分の練習で複数回の公演を実施するのは、欧米のオペラハウスでのオペラ・バレエ公演、そしてミュージカル公演、あるいは国内のポップス関係の全国ツアーによる複数公演などである。オペラ・バレエについては、総合舞台芸術として実に多くの出演者、スタッフが関わり、特別な演出による舞台装置などで、初めから芸術の意義を重視して取り組むため、公演を採算ラインにすることは眼中に無いと言って良いだろう。

芸術にとって益々厳しさを増す社会環境の中で、芸術の公演を成功に導く著書がでた。「芸術の売り方」ジョアン・シェフ・バーンスタイン著、山本章子訳である。企業の生産活動において販売を促進するマーケティングの重要性が叫ばれるようになる中、芸術・文化事業においても現代的マーケティング戦略の活用で、何よりも観客動員を増やす新たな視点が大事である、と述べられている。現状は金銭補助だけが念頭にあるが、人材やサービス、設備・施設、宣伝など色々な形での支援、援助が考えられ、総合的に芸術性と採算性のバランスを取りながら顧客開発を進めることが、究極のマネジメントであろう。