9月号 公立文化ホールの事業に関する調査研究 ―自主事業等アンケート調査―
館長 竹本義明
社団法人全国公立文化施設協会が、2009年2月から3月まで1,530の公立文化施設で実施した平成20年度の自主事業等の実施状況について、回答を求めた調査結果が公表された。
それによると、「舞台公演の自主事業を実施するのは、公立文化施設の6割で直営施設より指定管理施設の方が実施率が高い」ということであった。本来、芸術文化振興の拠点となるために必要な自主文化事業を実施しない施設が4割もあるということは驚きである。
自主事業費年間総支出は、平均で3千万円超、中間値では1千万円超で、総支出金額の約7割は何らかの事業収入で賄い、約3割は施設が負担する経費となっている。舞台芸術ジャンル自主事業費総支出額(見込み額)は、サンプル平均値3,271万円、中間値は1,104万円であり、舞台公演自主事業は、実施施設あたり年間平均10事業、1事業あたり平均1.5公演、クラシック音楽の事業が全体の3分の1を占め、ポピュラー等を合わせると事業数全体の5割強が音楽ジャンル(公演数シェアは4割強)となっている。
メディアを通じて文化施設の情報が社会に出てくるのは、年間事業費ならびに運営にあたる人的資源が確保されている新設施設や都道府県、政令市レベルの大型施設である。しかし、施設建設後10年を迎えようとする頃から、いずれも事業実施に陰りが出てくる。施設と舞台機構のメンテナンスへの予算配分が膨らむと同時に事業予算が削減され、加えて人的配置も縮小される傾向がある。結果として自主事業が実施出来ず貸館主体となるケースが増えている。
地域の中小規模公共ホールにおいては、最初から予算や人材の確保に制約があり、困難な運営を強いられている現状がある。調査によると、自主事業費の年間総支出額の平均が3千万円超となっているが、私自身この金額に実感が伴わない印象を持っている。データでも62%の施設の自主事業費が1,000万円以下であり、自主文化事業を実施しない、あるいは事業開催が低迷している公立文化ホール担当者からは、専門家がいない、予算がない、人手が足りない、そして事業運営のノウハウがないということが聞かれる。
ホールを活性化するためには、ホールが立地する地域に目を向け、地域の文化芸術資源をリストアップし、ホール利用について地域住民と協議することから始めることが求められる。まず地域で文化芸術に理解ある住民を組織し、住民の文化芸術ニーズの把握から始め市場創造をすることが必要と考えている。そして、官民一体となった組織による企画策定、助成収入を含む資金調達、実際の事業運営について実践による経験を重ねることである。