2013年 10月号 名古屋楽壇懇話会
2か月に1度開かれる「名古屋楽壇懇話会」という名古屋の音楽関係者の集まりがある。40年近く続く懇話会でありできるだけ出席するようにしている。以前はお酒好きな男性の年配者が多く、鳥料理専門店の座敷で音楽談義をしていたが、最近では若い音楽関係者が出席するようになり女性の会員も多くなったため、ホテルを会場として洋食系の食事を楽しむスタイルを取るようになっている。
幹事は、楽器メーカーの担当者が数年交代で務めてスムースな運営がされており、主な会員は地元芸術系高等学校及び大学の教員、芸術系大学同窓会役員、実演団体のメンバーや運営担当者、そして音楽関連の産業や事業に従事する人で構成されている。
最近の会合では、会員によるレクチャーやミニコンサートが行なわれ、参加する楽しみの一つとなっている。また、会員や関係者が近日中に行なう公演宣伝の一環としてチラシ等を配布することもある。
この十数年数多くのメディアの発達によって、簡単に情報が入手できるようなり、あえて懇談の場を設けて情報収集や意見交換を行なわなくても事足りるような気がしている。しかし、顔と顔を突合せ飲食を共にして懇談をすることで、それぞれの専門分野を超えた新たな発想が生まれ、異分野の連携が実現する可能性がある。
音楽芸術分野の公演は、東京と大阪の間でいわゆる名古屋飛ばしという言葉がある。有名な演奏家や団体の公演が大都市圏で名古屋だけ素通りしてしまうことであり、公演が実現してもプログラムがオーソドックスで魅力に欠ける内容が多かった。現在でも圧倒的に東京、大阪地域での公演が多いことに変わりがないが、外来演奏家や団体の中でオペラ公演などは、チケットの完売率において名古屋が東京、大阪を上回る実態が明らかになっている。
このようなことから、名古屋の音楽愛好家は潜在的に高額な料金を負担して鑑賞行動を起こすことがあり、クラシック音楽関係者から評価されていることもある。しかし、一方で地元演奏家や団体にとっては評価が厳しく、容易に鑑賞行動に結びつかないことが名古屋地域の特徴である。名古屋楽壇懇話会において常に話題となることとして、音楽文化の発展のために地元の演奏家、団体が活発に活動できるような環境を整えるにはどのような方策が効果的かという議論がある。
一つ言えることは演奏家の意識のあり方に問題があり、それを改善することが喫緊の課題であり、演奏家は公演の内容にのみ関心が偏り、実際に公演の運営に配慮が及ばないことが問題だということである。質の高い演奏を実現することは大切であるが、それはある意味演奏家にとって当たり前のことである。それに加えて演奏家の意識の中に、鑑賞行動の決定権は一般大衆にあるということを認識したマネジメントが必要だと言うことである。