2013年 7月号 ウインド~風~公演
ジョイントフェスティバルの最初の公演として、デンマークの男女2人による「風」をテーマにした演劇が実施された。0歳児でも入場が可能で少人数を対象としたコンパクトな実演である。セッティングの一部とリハーサルを少し見学し、本番の後半を鑑賞したが、ゆめたろうプラザで行なわれる通常の実演とは異なり、実演家と観客の境界が取り払われた興味深いものであった。
当初、この公演のチケット販売が開始された時、公演の内容が掴めないためかチケットの売れ行きが芳しくなかった。私たちも初めての公演で内容を説明することが出来ず対応が不十分であったことは否めない。しかし、公演を終えた結果できるだけ多くの人に鑑賞して頂きたい、という思いを強く持つ公演であった。
ステージは、男女2人がセッティングされた布や小物の間を動き回り、音や身体表現をともないパフォーマンスを行なう自由で即興的要素の加わったものである。2人の動きは、いくつかのパターンを除き会場の雰囲気を感じて演じるもので、その広がりやスケールの大きさに感動を覚えた。
さて、ウインドと言えば風のことであるが、管楽器を演奏する者にとっては、その集合体であるウインドオーケストラ(吹奏楽)を思い浮かべる。公演では様々な風に基づく場面が表現されていたが、風の名称は、強さ、風向きによる表現があり、地域の慣習や気象によって名称が冠されている。外国では風を表す言葉は日本より少ないと認識しているが、日本では四季がありそれと結びついた名称も数多くある。
私のように管楽器を演奏する者にとって、楽器の演奏にとって息のコントロールがとても大事であり、音楽表現に直接結びつくものである。演奏中の息の強さ、量に加えて楽譜を通じて感じる表情に適合した息の出し方が重要である。目に見えない息によって様々な表現を表すことは、今回の公演の風に通じるような気がしている。
また、音楽は絶対音楽と標題音楽というカテゴリーに分けられるが、絶対音楽は音楽そのものを表現するのに対し、標題音楽は音楽以外の風景や物語を表現するために作られた音楽とされている。今回の公演は風を起こすことにより、様々な表現を感じ取ることができ、音楽で言えば標題音楽、芸術的には総合芸術と言えるのではないか。
マダムバッハは世界で公演を行なっており、今回の観客は60名と小さな単位で互いに意思疎通が出来る範囲であり、新しい素材の使用と表現のイメージを向上させ、今後さらに発展して行く可能性を秘めた公演であった。身体表現、音、音楽そして美術的要素が凝縮された新しい創作作品の展開に期待している。