2013年 8月号 おもてなしのホール運営
8月のゆめたろうプラザは、例年に比べ公演が多く、事業運営の充実を感じる1ヶ月であった。毎年行なわれる「ゆめたろう寄席」は桂 歌丸師匠が出演するということで、寄席としては最大の観客が動員できた。今年初めての試みである複数館による「2013ジョイントフェスティバル愛知」は、劇座「父と暮せば」と劇団うりんこ「アリス」公演が実施され、他にサロンコンサート「瀬木貴将ケーナ&サンポーニャ」があり、サイエンスレクチャー「科学のトキメキ」としてノーベル物理学賞受賞者益川敏英氏の講演が行なわれた。
私事としては、今年の夏は猛暑続く名古屋の暑さを避け、8月の初旬1週間を札幌で過ごした。第58回となる「全日本吹奏楽コンクール北海道予選」札幌地区大会審査を引き受けたためである。札幌コンサートホールキタラで5日間かけて行なわれ、延べ200団体が出場する大規模な吹奏楽コンクールである。
キタラは1997年に開館し16年を迎える音楽専用ホールであり、札響のホームグランド
と位置付けられて施設内には札幌交響楽団が事務所を構えている。審査の休憩中に札響事務局を訪ねたら、10年ぶりに事務局長の宮澤敏夫氏にお会いすることができた。宮澤事務局長は、大阪フィルのコントラバス首席奏者を務め、後に大フィル事務局長となり日本演奏連盟事務局長を経て、札響事務局長を務めている方である。全国的にオーケストラを取巻く環境が厳しさを増す中で、北海道唯一のオーケストラとして着実に事業を発展させているようである。
さて、キタラで印象に残ったことがあり紹介したい。札幌コンサートホールキタラは音楽専用ホールのため、レセプショ二ストがホール内の各所に配置され、観客を席まで案内する業務を担っている。キタラでは長時間の審査で会場内に居たため、レセプショ二ストの業務をつぶさに観察することができた。吹奏楽コンクールでは、7分から15分で演奏団体の入替えのため舞台転換が行なわれ、その都度観客を案内して観客や演奏者にとって良い環境を維持していることの効果が評価できた。
日本におけるレセプショニストは、1986年の音楽専用ホールであるサントリーホールの開館と同時に始めたようであるが、通常キタラホールでは切符もぎり、クローク、案内係等に3時間単位で従事している。愛知県内では芸術文化センターやしらかわホールでレセプショ二ストを配置しているが、キタラの場合は配置するレセプショニストの人数が決められており、主催者は、会場使用料の他に人件費を負担しなければならないシステムとなっている。
演奏者と観客にとって良いコンサート環境が維持できる反面、主催者にとって会場使用料と同額程度のレセプショニスト費用を負担することが、ホール利用の条件となっていることに複雑な心境を持つ意見が聞かれた。